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3 薬に共通するおはなし(2):分布(D)(1)

2022年11月19日

吸収したお薬は、

効いてほしい細胞に届ける必要がありますね。

そこが「吸収・分布・代謝・排泄」の

分布(D)のおはなしです。

単に血液にのって全身の細胞の近くに行くだけ…

ではありませんよ。

薬が「血液にのる」ためには、

血漿タンパク質のアルブミンが必要です。

 

アルブミンのおはなしは、

血液成分のところと、

タンパク尿のところで耳にしたはず。

「不足するとむくむから、

食べないダイエットはダメ!」でしたね。

むくむ(浮腫)の理由は、

血液中のアルブミンが血液の浸透圧を保っているから。

血中アルブミンが不足して、

血管の外側(組織)と比べて

血液が「すかすか」になってしまうと、

血管内水分が「ぎゅうぎゅう」をうすめに

血管外へ出ていってしまうからです。

そんなアルブミンは輸送タンパクとも呼ばれます。

水に溶けないものと手をつないで、

血液と一緒に流れてくれるからです。

 

薬は、一般的にアルブミンと手をつないで

効いてほしい細胞のところまで流れていくことになります。

水に溶けない薬は、

アルブミンとくっつかないと

血液(水分が多い)で運んでもらえないから。

水に溶ける薬は、

急に溶けて薬が体の中で「ぎゅうぎゅう」になってしまい、

周囲(血管外の組織)から

水分を吸い取ってしまうことを防ぐためです。

アルブミンが手放した

(もしくはアルブミンと手をつながなかった)薬が、

効いてほしい細胞に届くと、

「分布(D)」のおはなしはめでたしめでたしです。

 

ここで覚えておいてほしいこと。

血液中アルブミンの量は、

食べ物と肝臓と腎臓の働きによって変化します。

 

アルブミンの材料になるタンパク質を食べ物からとらないと、

肝臓はアルブミンを作ることができません。

タンパク質が体内に吸収されても、

肝臓の働きが悪かったら

アルブミンを合成することができません。

アルブミンがちゃんと作られても、

腎臓の糸球体のざるの目がすかすかになってしまったら、

尿にタンパク質が流れ出てしまいます(タンパク尿)。

これでは、浸透圧が保てずにむくんでしまうだけではなく、

薬の本来の働きを期待することもできません。

 

だから、虫に刺されたような局所的なむくみではなく、

全身性のむくみが出たら

「食べ物?それとも肝臓や腎臓がおかしい?」と疑ってください。

同時に「…ということは、薬の分布がうまくいかない?」と

考えることもお忘れなく。

「思ったようにうまく効かない」

「急に強く効きすぎて体に有害な働きが出た?!」

この双方が起こりうる、ということですよ。

 

次回は、薬が毒になってしまうこともある

主作用と副作用、濃度のおはなしに入りましょう。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20221119更新)