3 憲法・法律:(3)民法レベル(1)委任関係
医療契約で医療従事者は
「善良なる管理者(の注意義務)」でなくてはいけません。
「善良なる管理者の注意義務」は「善管注意義務」と呼ばれることもあります。
自分のものではなく、他人のもの(他人のこと)を預かる立場になった以上、
「自分の物よりも大切に、
あなたが今できる最上級の注意をしないとだめよ!」という義務です。
例えば、自分の本なら書き込みも折り目も自由ですが。
友達から「ちょっと預かってて!すぐ取りに戻るから!」と
頼まれた本にそんなことをしてはいけませんね。
他人のものを預かっている以上、払える限りの注意を払う…
それが「善良なる管理者(の注意義務)」というものです。
これを看護師と患者さんとの関係に置き換えてみましょう。
患者さんの情報(心身のデータ、病気等)は、患者さん自身が管理するものです。
でも看護師はその情報を患者さんよりも先に知り、
情報の内容についてより詳しい立場にあります。
だから、患者さんについて知ることのできた(知ってしまった?)情報を
他に漏らさない義務(守秘義務)があります。
憲法レベルの「情報の管理」を、
民法レベルでは「医療従事者(=その情報を知りうる立場にあるもの)に、
払える限りの注意を払って秘密を守る義務(守秘義務)」として定めているのです。
また、情報の意味するところを分かるように患者さんに説明することは、
患者さんの自己決定権に役立ちますよね。
これまた憲法レベルの「自己決定権」を、
民法レベルでは「本人に情報を伝え、
その意味を説明する責任がある(説明責任)」と定めているのです。
突然ですが。
看護の勉強(カリキュラム)の中に
「医療倫理(もしくは単に『倫理』)」の科目があると思います。
それは小中学校での「道徳」の時間の延長ではありません。
「患者さんやその家族に対する倫理的配慮を学ぶ」と書くと、
分かったような分からないような不思議な気分。
その中身、実は医療契約から導かれる医療従事者の
「善良なる管理者(の注意義務)」そのものです。
次回、医療倫理の中身と
「善良なる管理者(の注意義務)」を確認していきましょう。