5 ウイルスの増殖と検査の確認:HIVの例(3)
「つまり…ウイルスが増えるには時間がかかるし、
血液中に出てくるまでにはもっと時間が必要。
ましてや抗体ができるまでには1か月くらいかかっちゃう。
だからHIV感染疑いのある行為から
1か月以上たってからじゃないと、検査を受けちゃダメなんだね」
はい、よくできました。
検査で何を見ているかと、
空白期間の関係も分かりましたよね。
空白期間(ウィンドウ期)と少し似た言葉に
「潜伏期間」がありますが、これは全く違うものですよ。
空白期間は、
感染から(抗体ができて)検査で「陽性!」と正しく出るまでの期間。
潜伏期間は、体に症状が出るまでの期間です。
HIVだと空白期間は1~3か月。
潜伏期間は(AIDSとして免疫不全状態が)
発症するまでの数年~数十年になります。
さて、ここで新コロナちゃんについて見てみましょうか。
新コロナちゃんは逆転写のないRNAウイルス。
HIVよりはウィンドウ期が短そうですが…
やはりすぐには血液で抗体検査をしても
正しい結果は出てきそうにありません。
潜伏期間はまだ研究中ですが、
数日から2週間(中には4週間との報告も!)が多いですね。
もしやと思われる(感染可能性の)事実があり、
たとえ熱や咳、鼻水やくしゃみ等の症状が出ても、
ウィンドウ期(空白期間)に検査をしても正しい結果は得られません。
ましてや感染しているのに
「陰性(血液中に抗体はないよ)」が出て、
「陰性ということは感染していないんだな!」と活動して、
周囲に感染を広めてしまう方が一大事です。
抗体検査以外の抗原を見る各種検査方法で
ウィンドウ期を短縮することはできますが、
ウィンドウ期をゼロにすることはできません。
ウイルスが1人では増殖できないことを思い出せば、
分かりますよね。
しかも抗原を見る各種検査方法は
どこでもできる簡単なものではありませんでした。
とどめに今までのおはなしから…
ウイルス一般に効く有効な薬はなく、
最終的に体内の白血球の働き頼りになってしまうことを考えると。
「うん…あわてて検査しても、何もいいことないんだね…」
今のみなさんなら、すとんと納得できますね。
ここまで理解できたなら…
セントラルドグマがらみで、もう少し応用編。
「ウイルスの変異」のおはなしもしておきましょう。