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4 行政・制度:(3)欠点の改良(2)[補足9]

2019年11月20日

高齢者虐待防止法の前提になった老人福祉法(1963)。

老人の福祉を図るために、

心身の健康保持と生活の安定に注目した法律です。

 

老人福祉法は、当初高齢者が自宅に(閉じこもって)いることに

問題があると考えていたようです。

だから「訪問介護を提供」もしくは

「デイサービスという通う場所を提供」することで、

高齢者の心身の健康を保とうとしたのです。

 

ときには「老人短期入所」で家族の息抜きの時間を設け、

機能訓練を居宅介護として提供。

認知症のある高齢者には共同生活の場所を提供し、

場合によってはそれらを組み合わせ。

 

上記の制度・施設で高齢者の生活が健康的なものに…なるはずでした。

 

しかし、社会の変化は予想よりはるかに早く。

核家族化で家族の構成員が減りました。

「面倒を見る人なんかいない!

家に帰っても誰もいないから、入院させといて!」という

社会的入院が増え続けました。

加えて、医療の進歩と共に着実に進む高齢者の増加。

その結果、医療費が圧迫されてしまい

公的医療制度がピンチに陥ったことはおはなし済みですね。

 

「そうか!住む場所が必要だったのか!」

気付いた国は、都道府県が各種老人ホームを設置できるように改めました(1990)。

 

入所して自立を援助するものが「養護老人ホーム」。

入所して介護等を提供するものが「特別養護老人ホーム」。

無料もしくは低額で入所して、

食事提供その他必要な便宜を提供するのが「軽費老人ホーム」です。

 

あとは入所しない(通所のみ)各種相談と

レクリエーションの場が「老人福祉センター」。

各施設の連絡調整のための「老人介護支援センター」も定めました。

 

これらが単に「詰め込むだけの空間」になってしまうことのないよう、

1人当たりの床面積や定員、

各種職員やその人数についても定めるようにしています。

その定めをクリアーする届出をあらかじめしておけば、

市町村や独立行政法人は養護老人ホームや特別養護老人ホームを設置できます。

 

また、社会福祉法人は厚生労働省令という定めによって、

届出ではなく「認可」という形で

養護老人ホームや特別養護老人ホームを設置できます。

「有料老人ホーム」というときは、この「社会福祉法人が設置した施設」ですね。

 

これで、社会的入院が解消されて、

高齢者に安心できる住環境がいきわたればよかったのですが。

都道府県や市町村の予算に対して、

希望する高齢者(の家族)が多すぎました。

結果として「老人ホームの空きがないため、数年待ちをする」

高齢者が列をなしたのです。

 

社会的入院解消のために作った施設まで順番待ちでは、

高齢者の福祉ははかれたものではありません。

そこで新たに定められた法律が、介護保険法(1997)です。

次回、介護保険法の中身を見ていきましょう。