4 皮膚・粘膜のおはなし(6)
アトピーの基本理解は、前回でできたはず。
今回はお薬についてです。
とはいえ、ここでお薬の全部をお話しすることはできません。
最低限理解しておいてほしい、
「ステロイド」についておはなしします。
最初に大事なこと。
ステロイドは、使っちゃいけない薬ではありません。
私たちの体の中で、ステロイドホルモンは日々作られています。
だから「ステロイドなんか使わない!」と
妙に硬い決心をしても、そこに意味はありません。
ちゃんとお医者さんの指示に従って使用していれば、
怖くもなんともないのです。
大事なことを確認したので、説明に入りますね。
まず、生化学を勉強してきた皆さんには
「ステロイド」の響きは懐かしいものですね。
そう、脂質で出てきたあの「五角形1個、六角形3個」のところです。
https://5948chiri.com/bioc-7-5/
あの形を持っているものはみんな「ステロイド」。
一般的に「ステロイド」と呼ばれているのは、
あの形を持っていて、
抗炎症作用を持つ副腎皮質ステロイドのそっくりさんです。
副腎皮質ステロイドの働きも、
生化学のホルモンでおはなししてありますよ。
https://5948chiri.com/bioc-11-11/
では、なぜ抗炎症作用があるのかというと、
「炎症物質が出来上がる前に邪魔をするから」ですよね。
ここについては、
生化学の脂質代謝のところでおはなししてあります。
炎症物質のもとになるアラキドン酸が出てこないように
邪魔をするので、炎症が起こらなくなるのです。
https://5948chiri.com/bioc-8-5/
https://5948chiri.com/bioc-8-6/
じゃあ、ここで「よくなった!もういいや!」と
自己判断で薬をやめたらどうなるでしょう?
本来、炎症物質があるということは、
そこに排除したい何か(異物、細菌等)があって、
白血球を集める必要があったということ。
薬で炎症を止めていた間に原因がなくなっていればいいのですが、
自己判断の中止では、原因はそこに残ったままです。
炎症物質は邪魔を受けなくなりましたから、
原因の排除のために、今まで以上にどんどん作られていきます。
すると薬を使う前よりもひどい炎症が起こります。
これが「ぶり返し」ですね。
このように、ステロイドの働きを理解すれば、
不要に恐れる必要はありませんし、
自分勝手に薬を中止することもありませんよね。
だから「お医者さんの指示に従って使用」することが大事なのです。
指示通りに使えば、アトピーのかゆみをかなり緩和できます。
正常の肌状態にも早く戻りやすくなるのです。
少なくともここを読んでいるみなさんだけは、
「ステロイド治療を拒否して赤ちゃんの肌がひどいことに!」
なんてかわいそうな状態にしないでくださいね。