2 呼吸器系のおはなし(5)
「交換のきっかけ」のおはなしです。
私たちが動くときには、何かきっかけがあります。
「なんとなく…」も、立派なきっかけですよ。
酸素や二酸化炭素も同じこと。
酸素や二酸化炭素の交換のきっかけは、
「分圧」です。
「分圧」と聞いて、身構える必要はありませんよ。
分圧というのは、
その気体のぎゅうぎゅう度合い(圧力)のこと。
気体はその濃さ(濃度)が増えるほど、
ぎゅうぎゅう度合いが上がります。
酸素の粒がたくさんあれば、「酸素分圧が高い」。
二酸化炭素の粒があまりないなら、
「二酸化炭素分圧が低い」です。
…これなら、難しくありませんよね?
分圧のことが分かったので、
肺胞の周りを見てみましょう。
とりあえず単位は無視して、数字の大小に注目ですよ。
全身を流れてきた血液の中には、
細胞から受け取った二酸化炭素が46㎜Hg入っています。
全身の細胞に酸素を届けてきた後なので、
酸素は40㎜Hgしか残っていません。
かたや外の空気を取り入れた肺胞の中は、
酸素が100㎜Hg、
二酸化炭素は40㎜Hg含まれています。
そして、
気体は「ぎゅうぎゅうからすかすか」に移動します。
まじめな言い方をすれば
「分圧の高いほうから低いほうに移動する」ですね。
肺胞と血液を比べてみると…。
酸素は肺胞中の空気から血液の中へ移動します。
二酸化炭素は血液から肺胞の空気へ移動します。
これが「肺胞のガス交換」です。
ちゃんと酸素を取り入れて、
二酸化炭素を吐き出すことができましたね!
無事にガス交換できたのはいいのですが。
これだけでは、肺胞に入った空気が外に行きません。
そもそも、
どうして空気が肺胞に入ってくるのかも説明できません。
だって肺胞は細胞の袋。
毛細血管は周りにありますが、
動かすための筋肉がありません。
だから、肺の外側にある筋肉が必要なのです。
呼吸筋(群)と呼ばれる筋肉たちですね。
呼吸方法によって主役になる筋肉が変わります。
腹式呼吸の主役は横隔膜。
胸式呼吸の主役は肋間筋です。
横隔膜は「膜」という名前がついていますが、立派な筋肉。
3つの筋肉の総称で、
ど真ん中に太い血管(大動脈と大静脈)と
食道の通る穴が開いています。
…穴が開いていないと、食べ物も血液も
胸部から腹部に届かないことになりますからね。
そして横隔膜は胸郭の下部境界になっています。
「胸郭」というのは、胴体の上部の空間のこと。
肋骨と横隔膜で囲まれて、
中に肺(と気管・気管支)と心臓がある空間です。
胸郭は基本的に閉鎖された空間。
出入口は気管から鼻や口に抜けるルートだけです。
次回はこの空間の大きさを変える、
呼吸の仕方を見ていきますよ。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220822更新)