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4 消化器系のおはなし(11)

2022年9月12日

さて、今回は排出の2経路をつなぐおはなし。

骨盤底筋群から始めることにしましょう。

 

前回の直腸・肛門部の説明をしたときに

肛門括約筋のおはなしをしていませんでした。

肛門括約筋は、肛門を必要なときまで締めておく筋肉。

内側と外側にあり、外側は自分でコントロールできますが、

内側は自分の意志ではコントロールできません。

コントロールするのは、自律神経系です。

もう少し先の神経系のところで、説明しますからね。

 

外肛門括約筋のいるところは、骨盤の底にあたります。

底に何もないと、体腔内の内臓が下に落っこちてしまいます。

だから、筋肉でハンモックを作っています。

これが「骨盤底筋群」と呼ばれる筋肉群。

外肛門括約筋は、骨盤底筋群の一部ですね。

これからおはなしする尿道の出口を締めておく尿道括約筋も、

骨盤底筋群に含まれています。

骨盤底筋という1つの筋肉ではなく、

たくさんの筋肉群で出来ているのは「通り道」を作るため。

「2 呼吸器系」の横隔膜も3つの筋肉で出来ていました。

あのときは食道と大動脈、

大静脈を胸部から腹部へ通す穴が必要でしたね。

今回も尿と便を通す穴が必要ですが…ここで性差が出てきます。

女性では、さらに出産のための膣の穴が必要になります。

しかも赤ちゃんの頭が通ることを考えると、

結構な大きさの穴を準備する必要があります。

だから骨盤の底を見たとき、

女性では筋肉に大きな穴が開いています。

 

これ、体腔内内臓を支えるうえで、結構なハンデです。

しかも出産は骨盤底筋群を酷使するイベント。

赤ちゃんの頭を通すために全力で緩んだがいいけど、元に戻れない…

そんなことも珍しくありません。

だから女性では特に「臓器脱」が問題になってきます。

その字の通り、臓器が骨盤の外へ脱出してしまうもの。

脱出してしまった臓器は、本来の動きができません。

膀胱、子宮、直腸…ときには小腸まで脱出してしまうことに!

排尿・排便障害の一因ですから、「排出」にとって大問題です。

 

だから、早いうちから予防です。

骨盤底筋運動について書かれている本・サイトも多いはず。

簡単かつ分かりやすいのは「尿を途中で止めてみる」ことです。

男性では「肛門を持ち上げる感じ」が分かりやすいと思います。

動く筋肉が分かれば、まずはオッケー。

そこをトイレに行くたびに、意識的にぎゅっと締めましょう。

…これだけのことですが、予防には十分です。

骨盤底筋群の「内臓を下から支える」働きを意識すると、

骨盤周りの立体構造把握にもってこいですね。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20220912更新)