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4 消化器系のおはなし(10)

2022年9月12日

排出のおはなしですが、出される「便」について補足。

前回「便の約1/3は水」といいました。

残りは約1/3が食べ物だったもののかす(食物残滓)、

約1/3が腸内細菌の死骸です。

 

「…細菌?!大変!病気!」なんて早とちりしないでくださいね。

腸内細菌は、ヒトが生きていくうえでとても大事な友達。

腸内細菌は菌叢(フローラ)を作って腸管内で生きていますが、

その大部分は人に害を及ぼしません。

大腸菌のように体外に出てしまうと有害なものはありますが、

原則は腸管内無害。

むしろ私たちにビタミンを作ってくれる

「善玉菌」すらいるくらいです。

善玉菌という名前の菌がいるわけではありません。

ヒトにとって「いい(ものを作ってくれる)菌」を、

まとめて「善玉菌」と呼んでいるだけです。

普段ビタミンKやビタミンB6の欠乏症にならずに済むのは、

善玉菌のおかげなので腸内細菌には「感謝!」ですね。

もちろん、体の中に入ってきたら問答無用で有害な細菌もいます。

そちらは微生物学でたくさんお目にかかれるはず。

…で、そんな細菌たちが体の中に入り込んできてしまったとき、

腸管は一刻も早くそれらを体の外に出そうとします。

それが下痢の一因

例えば冬場に猛威を振るうノロウイルスによる下痢では、

下痢止めを使ってはいけません。

下痢止めを使うということは、腸管の動きを止めてしまうということ。

つまり、腸管内にノロウイルスが滞在する時間が長くなります。

ノロウイルスは小腸上皮細胞を抜け落としてしまうため、

ノロウイルスがいる時間が伸びれば、

どんどん状態は悪化していきます。

…だから、苦しくても下痢止めを使わずに

ノロウイルスを腸管外へ押し出してしまう方がいいのです。

もちろん、場所が中途半端なので上(上部消化管)からも

食べ物と一緒にウイルスの追い出しは行われます。

これが「嘔吐」です。

 

以上、腸内細菌のおはなしついでに、

下痢の原因についておはなししました。

細菌ではなくウイルスの例でしたが、原理は一緒。

「どうして下痢や嘔吐の必要があるのか」

そこが分かると、微生物学や病態学の勉強がすすみますよ!

 

体外への出口、直腸・肛門付近も確認しておきましょう。

出口から5~6㎝程上にある

「コールラウシュひだ」は覚えてしまいましょう。

これ、肛門から薬を入れる浣腸で重要になります。

肛門から薬を入れるとき、

肛門部だけではなくもっと前(S状、下行結腸等)に

薬を届かせたいことがあります。

そのとき入れる長さは3~5㎝。

肛門括約筋よりも奥に入れないと、

すぐに薬が出てきてしまいます。

あまり奥に入れると、

直腸部(特にコールラウシュひだ)に傷がついてしまうので、

長さは正確に把握してくださいね。

 

また、浣腸では結腸の走行も大事になります。

浣腸時に体を横にして(側臥位)薬を注入しますが、

左を下にした側臥位(左側臥位)にしないと、

薬が結腸へと流れていきませんよ

結腸の走行を思い出してみましょう。

右は小腸とつながっている上行結腸、

左が肛門につながる下行結腸です。

しかも側臥位になったとき

肛門より下に位置して薬が流れるのは、

左側臥位にしたときの下行結腸ですよね。

文字でイメージできないときには、

図を横にしてみてくださいね!

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20220912更新)