6 各論1:脈・血圧(心臓):不整脈・心不全(2)強心薬(3)
心不全の原因(心筋収縮力低下の原因)には
いろいろありますが。
そのうちの1つが高血圧です。
体内の血液量が多い
(または血管が狭くなってしまった)ため、
全身に血液を送る心臓が
必要以上に頑張らなくちゃいけない状態で…。
結果、心臓がばててしまいます(心不全)。
血管を広げる薬については、
狭心症のところでおはなししてありますね。
ここでは次の「血管」のおはなしにもつながる
「利尿による降圧剤」の一部をおはなしします。
利尿剤にもいろいろあるのですが、
ここでは
レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系を邪魔する
ACE阻害剤のご紹介です。
レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系は
生化学の腎臓のところでおはなししましたね。
「血圧を上げるために唱える呪文」でした。
だから、ここを邪魔すると血圧を下げることができます。
「尿量が増えると、体内水分量が減り、
体内循環量も減って血圧が下がる」
これ、早めに慣れてしまってくださいね。
具体的に邪魔するところは、
アンギオテンシン1を
アンギオテンシン2に変える酵素
(アンギオテンシン変換酵素:ACE)です。
アンギオテンシン2は、
アルドステロンに命令して
「ナトリウムイオンと水を再吸収して、
カリウムイオンを分泌」させていましたよね。
水分が尿細管内(体の外)から
毛細血管内(体の中)へと移動しますから、
体内循環量が増えて血圧が上がります。
さらにアンギオテンシン2は
自分だけでも血管を収縮させる働きがあります。
そんなアンギオテンシン2を邪魔しますから、
血管内径の意味でも
循環量の意味でも血圧が下がるのです。
効きが強くて便利に思えますが、
残念ながら禁忌が多め。
例えばACE阻害剤に含まれるカプトプリル。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00062971
人工透析をしている人では、
人工透析用の膜やフィルターとの関係で、
血管拡張作用が強く出すぎる危険があるので禁忌。
妊娠中、妊娠可能性のある人、
授乳中の人も禁忌。
胎児毒性・催奇形性、
母乳中移行が報告されています。
また他に特定の降圧剤
(アリスキレンフマル酸塩:ラジレス)を使っている人も、
腎障害や低血圧リスクが高いので禁忌です。
さらに、血管浮腫になった人も禁忌。
血管浮腫は皮膚や気道、
消化管等に出来る突発性のむくみ。
唇だけにできると「たらこ唇」状になります。
基本的に数日で消えるため、
軽度なら病院にもかからずに
放置されることも多いのですが…。
気道にできると、
空気が通れずに呼吸困難に陥ってしまいます。
だから血管浮腫の誘因になりうる
ACE阻害剤の禁忌になるのです。
降圧のおはなしは、章をまたいで続きますよ。
次回からは「7章 血管」になりますが、
血圧に関する薬のおはなしは
続いていきますからね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221214更新)