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2 皮膚(1)基本構造と細胞に必要なもの

確認できたところをまとめ直しますよ。

「皮膚には、ヒトの全身の働きが必要」になります。

と、いうことは。

ヒトの器官系のどこかがおかしくなると、

皮膚がおかしくなるということです。

 

分かりやすいのが「色」ですね。

呼吸器系や循環器系がちゃんと働けず、

細胞が酸素不足になると

皮膚や粘膜が青白くなるチアノーゼが出てきます。

消化器系の一部に含められることもある肝臓の調子が悪くなってくると、

分解できるはずの色素を分解できずにそのまま沈着したせいで、

皮膚や粘膜が黄色くなる黄疸が出てきます。

他にもタンパク質や水分不足で「お肌のハリがなくなる」、

「かさつく…」等の皮膚のトラブルが思い浮かぶはず。

 

皮膚の「変!」は「皮膚だけの『変!』」ではなく、

「全身にとっての『変!』」であるかも知れないことを

覚えておいてください。

 

こうまとめると、細胞やDNA・ATPの材料になる

タンパク質・脂質・糖質をバランスよく含む食事が

皮膚の大前提になること、分かりますね。

そして食生活だけでなく、

運動や睡眠などの「健康のために良い習慣」は、

「皮膚にとってもいい習慣」になりますよ。

 

「正常」の面からおはなししたことを、

「異常」の面からも確認してみましょう。

皮膚を作る細胞に栄養や酸素が届かなくなると、

皮膚を保つことができません。

その例として、褥瘡について簡単におはなししますね。

 

褥瘡(「床ずれ」)は、

姿勢を変えられないこと等によって圧迫された部分の血液の流れが不足し、

細胞がうまく働けなくなったもの。

少しの時間血液の流れが悪くなると、皮膚が赤くなります。

皮膚の細胞は「…?ちょっと血液足りない?」と思い始めるあたりです。

通常なら、こうなる前に寝返りを打つなどして姿勢を変えます。

だけど感覚神経の異常

(「圧迫されてるから、向き変えてー」と感じない)や

運動神経・筋肉の異常(寝返りを打ちたいのに、動かない!)、

さらには命令を出す脳の機能異常等があると、

血液の流れが途絶えてしまいます。

そうすると赤くなった皮膚が凹んで、えぐれてきます(潰瘍)。

酸素や栄養が来ないせいで、死んでしまった細胞が出始めたのです。

死んでしまった細胞の分を、

皮膚細胞は細胞分裂で埋めようとしますが…

細胞分裂にも酸素や栄養分が必要。

そうこうしているうちに残った細胞も次々と死に、

皮膚がなくなって、筋肉や骨が見えてきてしまいます。

これが褥瘡です。

 

決して「へこんで見た目が悪くなった」だけではありません。

痛みを感じる神経が周辺にあれば、痛みます。

死んだ細胞が残っていると、見た目が悪いだけでなく臭いのもとです。

皮膚がありませんので、

細菌等の異物が入りこんで感染症のもとになります。

だから、細胞に栄養や酸素を届ける血液の流れが大事になってくるのです。

 

循環器系の「困った!」と聞くと、

ついつい派手な「血が出た!(出血)」や

「詰まった!(梗塞)」ばかりを思い浮かべてしまいがち。

「体重で血管がつぶれて血液が届かない」ことも、

重大な「困った!」であることを褥瘡の例で覚えておいてください。

だからこそ、

寝たきり状態の人は一定時間ごとに姿勢を変える必要があるのですね。

 

以上が、皮膚を「細胞一般」の視点から見たときの

「必要なもの」でした。

続いて、

「皮膚の上皮細胞」という視点から必要なものを確認していきましょう。