10 核酸・遺伝子のおはなし(5)
塩基のおはなしが一通り終わりました。
痛風(尿酸)と
プリン体(プリン環を持つもの)についても、
前回のおはなしで分かってくれたはず。
今回はちょっとだけ塩基の補足。
なぜ紫外線が殺菌作用をもつのか、というおはなしです。
日光に当てると殺菌作用!といいますよね。
これは日光の紫外線が、
細菌の核酸(DNAやRNA)をおかしくするせいです。
細菌も生物ですから、設計図のDNAやRNAがあります。
このDNAやRNAに紫外線が当たると、
「ピリミジン2量体(例:チミン2量体)」と
いうものができてしまいます。
ピリミジン環をもつチミン、ウラシル、シトシンが、
同じものどうし2個で手をつないでしまうのです。
…本来手をつなぐはずだったアデニンやグアニン、
手をだれともつなげなくて1人ぼっちです。
塩基は決まった相手と手をつなぐことで情報をコピーします。
だから2量体ができてしまったところは
情報をコピーできずに「欠け」ができてしまいます。
DNAなら、欠けがあってもお直しサービスがありました。
でもお直しの量が多すぎたら、
次の細胞分裂までに欠けを直せません。
直せないと…
情報が欠けた状態で次の細胞へのフルセットコピー開始。
もう欠けた状態が「元の」状態。
これでは情報がどんどん伝わらなくなっていきます。
やがて自己を維持するための
タンパク質を作る情報がなくなり、
細菌は死んでしまいます。
これが「紫外線による殺菌」です。
お直しサービスがないRNAを設計図にしているウイルスだと、
もっとわかりやすく影響が出そうですね。
もちろん、紫外線による殺菌にはもっと直接的な効果もあります。
紫外線によるタンパク質変性です。
紫外線がタンパク質の3次構造を壊してしまい、
立体構造が変わったタンパク質は
本来の働きを果たせなくなるのでしたね。
ここ、忘れている人は「5 タンパク質」を読み直しましょう。
タンパク質の形が変わるとどこがおかしくなるか…については
「6 タンパク質代謝」に書いてありますからね。
ここで紹介する一例としては、細胞膜に埋まっている膜タンパク質。
ここがおかしくなると、細胞内のミネラル濃度維持ができませんよ。
ミネラル維持ができないと、細胞は生きていけないというおはなしは
「9 ビタミンとミネラル」でしたばかりですね。
ちなみに。
この紫外線による影響はヒトの細胞も等しく受けています。
でも、ヒト細胞は細胞分裂の間がそこまで早くありません。
だからお直しサービスが間に合って、
情報欠けは修復されてから細胞分裂になるので、一安心。
とはいっても日焼けサロン通いのように、
自分から紫外線を浴びすぎないでくださいね。
いくら皮膚には紫外線を傘のように
防いでくれるメラニンがあるといっても、
欠けが多すぎたらお直しサービス間に合いません。
もちろん、日光を極度に恐れるのもだめですよ。
今度はビタミンDが活性化されずに、
骨や歯が弱くなってしまいますからね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220530更新)