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13 酸とアルカリのおはなし(3)

2022年7月14日

前回までのところを一度まとめておきますよ。

ヒト血液の正常pHは7.35~7.45

正常域より酸性になる(数字が小さくなる)のがアシドーシスで、

アルカリ性になる(数字が大きくなる)のがアルカローシスです。

肺が原因だと「呼吸性」の接頭語が付きます。

窒息は二酸化炭素を吐き出せない

「呼吸性アシドーシス」で、

過換気症候群は二酸化炭素吐き出しすぎの

「呼吸性アルカローシス」

肺以外が原因だと「代謝性」の接頭語が付きます。

下痢、腎不全、糖尿病が「代謝性アシドーシス」の例で、

嘔吐が「代謝性アルカローシス」の例です。

できればただの暗記ではなく

「水に溶けて酸性の二酸化炭素が多すぎだから!」

「体の中の酸性が出て行っちゃったから!」と

原因・理由から理解してくださいね。

 

さて、ひとまとめして分かってくれたと思いますが、

ヒト血液のpHはちょっとしたことで変化してしまいます。

お腹を壊したら代謝性アルカローシスになって、

細胞が生きていくのに

適した環境じゃなくなった…では困りますね。

それに細胞は、代謝の結果ATPだけではなく

二酸化炭素(と水)を作ります。

二酸化炭素で、血液がすぐに酸性に傾いて

アシドーシス…ではやってられません。

だから、ヒトの体には「緩衝系」というものがあります。

「(pH変動の)衝撃を、やわらげる(緩やかにする)」で、

緩衝系です。

緩衝系にもいろいろな種類がありますが、

最初は「赤血球の炭酸水素緩衝系」を理解しましょう。

 

赤血球は毎度おなじみ酸素を運んでくれる血球です。

酸素を細胞に運ぶ片手間に、

血液pHまで守ってくれる本当にすごい働きです。

赤血球に心からの感謝をしつつ、

何をしているかを確認しましょう。

 

赤血球は、

細胞から出された二酸化炭素を内側に取り込みます。

血液中の水も中に取り込んで、

2つをくっつけて炭酸水素(H2CO3)を作ります。

これなら二酸化炭素が血液に溶けていませんから、

血液のpHは酸性に傾きません。

このまま肺まで運んで行って、

肺で二酸化炭素を体の外へ。

水はそのまま血液へ。

これなら、

血液中に酸性を示すものが増えても何とかなりそうです。

血液中にアルカリ性を示すものが増えても対応できますよ。

例えば重炭酸イオン(HCO3)が増えたら、

それも赤血球の中へ。

今度は水素イオン(H+)を取り込めば、

これまた炭酸水素(H2CO3)の出来上がりです。

肺で二酸化炭素として出せば、これまた一安心です。

 

「あれ?肺と腎臓の働きどちらにも関係してる…?」

 

大当たり。

赤血球の炭酸水素緩衝系は、

体内の2大調節器官「肺と腎臓」をつないでいるのです。

酸素を運ぶ意味でも、pHを守る意味でも。

赤血球には頭が上がりませんね。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20220716更新)