4 血糖と糖尿病のおはなし(3)
なぜ血糖値高すぎはだめなのか。
今回は「糖尿病」のおはなしです。
まず、糖尿病とはどんな病気か。
「空腹時も高血糖で、尿に糖が出る病気」です。
単に「尿に糖が出た!」だけでは、糖尿病ではありませんよ。
じゃあ、空腹時も高血糖だと何がどうなっているのか。
空腹時(食間時)も高血糖…
これ、細胞にグルコースが取り込まれていない状態です。
インシュリンの号令がないか、
号令はあっても細胞が居眠りして聞いていないか。
いずれにせよ、
本来なら細胞に取り込まれるはずのグルコースが
血液中に残っていると考えるのが自然。
このとき困るのは細胞と腎臓です。
細胞が困るのは分かりますね。
もちろん、
生きていくための必要最低限は号令がなくても細胞内に入りますが、
原則として細胞はグルコース不足です。
さらに、腎臓は「糖の再吸収」が急に増えててんてこ舞いです。
腎臓のおはなしはかなり先でやりますが。
糖は大事なものなので、
尿(体の外に捨てるもの)に出てしまったら困ります。
だから、腎臓はせっせと体の中に戻し入れる
「再吸収」をしています。
ところが流れてくる糖の量が増えると、
腎臓の手が回らなくなってきます。
「全力で再吸収してるけど、もうだめ!間に合わない…!」
これが「尿に糖が出る」理由です。
…確かにもったいないけど、それのどこがだめなんですか?
「細胞が困る」ところをもう少し詳しく見てみましょう。
細胞は必要最小限のグルコースを取り入れることはできました。
でも高血糖状態でATPを作ろうとすると、
どうしてもソルビトールができる量が増えてしまいます。
ソルビトール自体は普通の糖。
人工甘味料としても使われるものです。
でも、ソルビトールが細胞内にたくさん増えた結果、
それを薄めようとたくさん水が細胞内に入り込んできます。
ここは浸透圧の話が分かっていれば簡単ですね。
…細胞内に水がたくさん入ったので、
細胞を大きくできれば、問題はありませんが。
ヒトの細胞、1つではありませんでした。
周囲の細胞がありますし、大きくなれる限界があります。
すると流れ込んだ水の圧力が細胞自体にかかり、
細胞が「苦しい!」状態になってしまいます。
これが神経細胞で起きると…しびれや痛みが出てきます。
それこそが高血糖の悪影響。
糖尿病の合併症の1つ、末梢神経障害です。
糖尿病には怖い合併症が3つあり、三大合併症と呼ばれます。
腎臓がおかしくなる、網膜(目)がおかしくなる、感覚がおかしくなる。
これらが「糖尿病性腎症・網膜症・末梢神経障害」です。
そのうちの1つについて、皆さんはもう理解できましたね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220313更新)