7 脂質のおはなし(4)
両親和性を示す脂質が細胞膜のもとになっていること、
前回のおはなしで分かりましたね。
今回は平面ではなく、球体のおはなし。
両親和性を持つ脂肪酸があって、
水がそれよりもたくさんあったらどうなるか。
脂肪酸の量が水に比べ十分にあれば膜状になれますが、
脂肪酸の量が足りないときには…球ができます。
球は表面積が一番少ない状態。
これで何とか「水に触れる外側は、水好き」状態を保つのです。
内側は水嫌いの炭素水素鎖だらけ。
これならば、外側も内側も安定した状態でいられますね。
この「外側は水好き、内側は水嫌い」の球形をミセルといいます。
中に少量の油(水嫌い)を取り込むことができるので、
水と油を仲良くさせる働きがあります。
この性質を利用したものが「セッケン」。
家の中にあるセッケン(やシャンプー、洗剤)の
成分表示を見てみましょう。
「~酸ナトリウム」という文字がありませんか?
「~酸」の部分は、脂肪酸です。
最後の「ナトリウム」は、水好き部分。
これを油(汚れ)のある所に入れると、
水嫌いの脂肪酸部分が
「油だね!仲良くしよーねー」と手をつなぎます。
ここに大量の水が来ると…
油汚れを中心にくるむように、先程のミセルが出来上がります。
ミセルの外側は水となじむので、水と一緒に流れていけます。
油汚れよさようなら!
これがセッケン(やシャンプー、洗剤)の原理です。
このミセルが活躍しているところは体の中にもあります。
それが脂質の吸収と体内運搬。
詳しくは脂質代謝のときにおはなしします。
でもここで名前と大きさには慣れてしまいましょう。
体内で脂質運搬を担当しているミセルは
タンパク質も含んだ球形をしているため、
「リポタンパク質(リポタンパク球)」と呼ばれます。
大きいほうから「キロミクロン」、
「超低密度リポタンパク質(VLDL)」、
「低密度リポタンパク質(LDL)」、
「高密度リポタンパク質(HDL)」です。
…ん?LDLとHDLって、聞いたことあるぞ!
そうですね。
この2つは最近コマーシャルや広告で見かけやすくなりました。
どちらも「コレステロール」を運ぶリポタンパク球です。
ただ、末梢(全身の細胞)にコレステロールを運んでいく
LDLは『悪玉』なんて呼ばれちゃっていますね。
…でも、コレステロールってそんなに悪い奴なんでしょうか?
その説明は次回の誘導脂質でおはなししましょう。
結論だけ先に言っておきますね。
「コレストロールはじめ、
脂質は回転しているかぎりは悪者じゃないですよ!」
【今回の内容が関係するところ】(以下20220413更新)
2 皮膚(3)皮膚に必要なもの
ここで確認。 なぜセッケンを使うと油汚れが落ちるのか。 「セッケン」と一言でまとめていますが、 そ ...
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