11 精神のおはなし(1)せん妄、認知症、うつ病(4)

D 前頭側頭型認知症

認知症全体の中では比較的まれな型が「前頭側頭型」。

この型の特徴は「行動異常・人格変化」です。

発症は比較的若年に多く、

「若年性認知症」に限定すれば

かなりの割合を占めるようになります。

タウタンパク等の異常タンパクが脳にたまるせいで

症状が出る点では、

レビー小体型認知症と似ていますね。

たまる場所が前頭葉に集中するので、

認知症にしては記憶障害(物忘れ等)が出にくいですよ。

病気の自覚はなく(病識欠如)、

時刻表のような「決まった生活」(常同行動)が出てきます。

「本人がしたいときにしたいことをしてしまう

(脱抑制)」ことも特徴。

「診察中なのにさっさと立ち去る」くらいなら笑い話に出来ますが、

「会計前なのに商品を食べだす」等では社会的問題になってきます。

一方、外的刺激を受けるとオウム返し(反響言語)や

同じ行動をとる(模倣行動)こともありますよ。

 

この型に対しては、特に根本的治療になる薬はありません。

介護を家族だけに任せず、他者の協力を得ていく必要があります。

全てを禁止するのではなく、

本人(やその社会的評価等)に悪影響の出ることのみを

コントロールできればいいのですが。

現実的に考えると、

介護者にとても負担が大きいことも事実です。

 

今までおはなししてきた認知症は

「戻らない」ものですが、

一部には「もとに戻る可能性のある(可逆的な)」

認知症もあります。

それは慢性硬膜下血腫で出る認知症と、

正常圧水頭症で出る認知症。

どちらも中枢のところでおはなしした

「圧迫されて苦しい!」によって

神経細胞が「変!」になっている状態です。

具体的に起こっていることは、

中枢のおはなしを見直せばわかるはず。

とにかく圧迫を早く取り除いてあげてください。

 

そしてここで気付いてほしいこと。

神経細胞の働きが何らかの原因で「変!」になると、

認知機能が変になります。

「神経細胞の働き」には

神経伝達物質も必要でした。

神経伝達物質の働きは、

「心(精神)」のあり方にとても大きく影響しています。

ここから先、体験しないとなかなかイメージできない

「心の状態(精神状態)」がたくさん出てきます。

それを見て「分からない!怖い!」で終わってしまうのではなく、

「どこかの神経細胞の働きが変になって、

こんな状態になっているんだろうなぁ」と

思ってほしいのです。

とらえにくい「心」を、

「(神経)細胞」というまだイメージ可能なものに

置き換える一手間が、精神分野の理解を深めるコツですよ。