6 身体防御・免疫:侵入者なんて許さない(3)
抗体には5種類あります。
それぞれ担当が決まっているので、
担当(役割)と抗体の形、名前をセットで覚えてしまいましょう。
Ig-Mは「一次応答」担当。
一次応答というのは、
初めての異物が体の中に入ってきたときの反応です。
何が効くかよくわからないので、
異物反応部位(対抗手段)が5(ものによっては6)個あります。
これが「5量体」の意味。
「このうちどれかは効くはずだ!」
…Ig-Mは「数うちゃ当たる!戦法」ですね。
Ig-Gは、「二次応答」の担当。
二回目以降の異物侵入に対応するもので、異物反応部位は1つだけ。
「Ig-Gは1量体」ですね。
こちらは数の多さで勝負。
人体内抗体の約7割はIg-Gです。
続いてIg-Aは異物反応部位が2つの「2量体」。
分泌型と呼ばれ、
消化管や母乳内に分泌されることが特徴です。
母から子に伝わる免疫は、問題に出されやすいですね。
「母子免疫」と言えば、
母乳経由のIg-Aと胎盤経由のIg-Gです。
ヒントは抗体のサイズ。
Ig-Mは大きい5量体なので、
胎盤を抜けることができません。
Ig-Gは1量体ですから、
楽に胎盤を抜けることができます。
Ig-Aは母乳分泌ですから、
胎盤を抜ける必要はありませんね。
1量体の抗体はあと2つあります。
でも働く場所が特徴的なので胎児へは伝わりません。
Ig-Eはアレルギー反応で働く抗体。
花粉症が代表例ですね。
花粉症では、花粉という異物が入り込んできたところを、
Ig-Eのガードマンが取り押さえます。
そして細胞小器官の分泌顆粒に
「異物があるから押し流して!」と救援要請。
分泌顆粒の中にあったヒスタミンが
涙や鼻水を出させて、異物を体の外に押し出します。
鼻で働いていたら、胎盤には行けませんね。
またIg-Dは白血球の分化で働く抗体。
白血球の分化の場所は、骨髄です。
これまた、胎盤へは行けそうにありませんね。
だから1量体は3種類あっても、
胎児のところに届く1量体は1つだけ、なのです。
免疫の基本が分かったところで、
具体例でみてみましょうか。
ここでは「予防注射」についておはなししますね。
予防注射をする理由は「一次応答を終わらせる」です。
異物が体の中に入ってきたとき、
それが初見ならIg-Mの一次応答になります。
でも、2回目以降なら
たくさんのIg-Gであっという間に対応できます。
だからあらかじめ無毒(もしくは弱毒)化した異物を
体の中に入れる、これが予防注射です。
こうしておけば、注射によって一次応答終了。
体の中に同じ異物が入りこんできたら、
病気にならなくて済む
(もしくは軽くて済む)ことになります。
ただ、体の中に異物を入れていることは事実。
だから予防接種は体調が悪いときにはできません。
次回、今までの内容をおさらいしますよ。