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9 呼吸器系のおはなし(1)通り道と赤血球(2)

1、鼻腔、副鼻腔の異常

(1)鼻出血

鼻出血がいわゆる「はなぢ」。

他に原因のない「本態性」もありますが、

多くは出血原因が明らかな「症候性」です。

 

症候性には全身的要因と局所的要因があります。

全身的要因にあたるのは、

易出血性・出血傾向を示す全ての疾患。

イメージしやすいのは血液系(血小板異常)や

消化器系(腎不全・肝硬変)。

あと、常染色体優性遺伝の

遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)も鼻出血原因。

ひどいとくしゃみや鼻呼吸ですらも出血が生じる病気です。

ワーファリンやアスピリン等の薬物も原因になりえますね。

 

局所的要因には、炎症の反復、異物、腫瘍等もありますが、

一番多いのは外傷です。

顔面外傷や鼻骨骨折のような重症は「外傷」ですが、

手の指による自損だって「外傷」です。

特に小児の鼻出血の約9割は、

手指による鼻中隔前方部出血。

ここは動脈と静脈の吻合部で、

細い血管が網の目状になっていて出血しやすいところ。

「キーゼルバッハ部位」といいますので、

覚えておくといいですよ。

 

よほどの軽症以外は、

鼻出血を見たらバイタルサインの測定から。

原因となっている病気をうまくコントロールしないと、

貧血を起こして、ショックの危険があります。

場合によっては即時に血管内塞栓や

血管結紮(けっさく:「しばる」こと)等の

外科的処置がとられます。

軽症なら、圧迫止血や

焼灼(しょうしゃく:「やきつける」こと)凝固止血。

座位でうつむいて、

鼻の外側から圧迫するなら、家庭でもできますね。

血液はのみ込まずに吐き出してくださいね。

鼻いじりだけではなく、

くしゃみ、洗顔、強く鼻をかんだ等で

鼻の粘膜さえ損傷すればいつでも鼻出血は出ます。

日常生活でも頻回に出会う「困った!」ですから、

基本的対処には慣れておきましょうね。

 

(2)炎症

炎症の代表はアレルギー性鼻炎と副鼻腔炎。

アレルギー性鼻炎は、

アレルギー体質の人が特定抗原を吸い込み、

鼻の粘膜でⅠ型アレルギー反応を示すものです。

くしゃみ、鼻閉、水溶性鼻漏が見られます。

基本は抗原回避。

ひどいときには下鼻甲介を

切除・焼灼する手術療法もありますが、

抗アレルギー薬内服等が多いことについては、

体温1:血液・免疫(過敏症)のところで

おはなしした通りです。