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7 ヒトを取り巻く環境(1):遷移について(1)

森林と土壌の深い相互関係、分かりましたね。

だからどちらが先かと考え出すと、

堂々巡りの「卵が先か、鶏が先か」になってしまいます。

 

そこまで分かったうえで、今回は「遷移」のおはなし。

ある日突然、植生をとりかこむ環境が大変化することがあります。

そこから元の姿に戻るまでの植生の移り変わりが、「遷移」です。

「火山噴火!一面焼け野原!」のイメージで説明していきましょう。

 

「噴火」なので、溶岩や岩石だらけの

(植物のない)裸地状態からのスタートになります。

この状態、土壌の4層構造がありません。

良くて下の2層(岩石の層と石と砂の層)止まりです。

ここままでは、木も草も自分の体を支えられない

(しかも水分を蓄えてくれるところもない)状態です。

 

だから最初に生活できる植物は

コケ類や地衣類(菌類と藻類の共生)ぐらい。

コケ類や地衣類が枯れ、分解されると…

乾燥に強い草木植物の一部(パイオニア植物)が

生活できるようになってきます。

地下茎で生き残っていたり、

鳥や風によって種子が運ばれてきたのですね。

 

さらにこれらの植物が枯れて分解されると、

草木植物ぐらいなら養えるほどの腐植層ができてきます。

これでいろいろな草木植物が生活する草原の完成です。

ここまでくれば、木本植物まではあと少し。

 

草木植物が枯れ、さらに分解されて…

先駆樹種(白樺やクロマツ等)が生きていけるようになれば、

あとは森林の完成を待つばかりです。

 

「森林」と一言で言っても、

遷移中と遷移完了後の木々の構成は違いますよ。

「植物には陽性植物と陰性植物があって、

林冠には光が当たるけど林床には光があまり当たらないから

陰性植物しか生きていけない」…というおはなしはしましたね。

 

先駆樹種は陽性植物の一部で「陽樹」と呼ばれます。

木が育つにも生きていくにも、

ずっとたくさんの光(強い光)が必要です。

先駆樹種が成長でき、さらに腐植層が分厚くなると、

他の木本植物(樹木)も生きていけるようになります。

…今度は日当たりを求めて競争が始まります。

 

陽性植物はたくさんの光があるほどどんどん成長できますが、

そうでなければ枯れてしまいます。

一方の陰性植物は成長速度こそゆっくりですが、

多少弱い光でも着実に成長していきます。

光補償点や光飽和点の違いは、先に一緒に確認しましたよね。

先駆樹種の林床でも、陰樹(陰性植物の樹木のこと)は

少しずつ大きくなっていけそうです。

このように陽樹と陰樹が混ざっている状態を

「混交林」と呼びますよ。

 

やがて陰樹が陽樹よりも大きくなると、

陽樹は日光不足で枯れてしまいます。

残るは陰樹のみ。

この状態では、もう植生変化は原則として起こりません。

これが「極相林」です。

 

…「原則」があるということは、例外もあるということ。

台風や土崩れ等で木が倒れ、

林床にも光が差し込むことがあります。

これが「ギャップ」。

背が低くても、陽樹が育つことのできる地点の誕生です。

そして陽樹の方が(光さえあれば)早く育ちますから、

極相林の中にも陽樹があるエリアができる…ということに。

 

だから極相林の中に陽樹があったら、

「ああ、ギャップがあったんだな…」と思ってくださいね。

次回は、火山噴火以外の遷移も確認していきましょう。