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6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(20)

膵臓の細胞が言うことを聞かずに増えだす膵腫瘍。

いろいろと種類がありますが…

「浸潤性膵臓がん」はとても危険。

腹痛・背部痛・黄疸・体重減少にとどまりません。

膵臓の中心を通る主膵管が閉塞されると、

糖代謝に異常が出て、

そこから見つかることも少なくありません。

 

がんの大きさが直径20mm未満なら、

すぐに手術・化学療法・放射線療法等の治療をはじめれば、

5年生存率は50%近くです。

「半分しか、5年生きられないのか」ではありません。

膵臓がんとしては

「半分も、5年も生きられるのか!」です。

だから病気が見つかったら、

いきなり終末期ということもありえます。

糖代謝異常を伴いやすいので、

糖尿病の看護も必要になりそうです。

 

かたや良性の膵臓の腫瘍がインスリノーマ。

ランゲルハンス島B細胞由来の腫瘍です。

インシュリンを作る細胞が増えすぎて、

インシュリンが出すぎます。

そのせいで低血糖による意識・記憶障害、

傾眠傾向やけいれんが出てしまいます。

自律神経症状の発汗が見られることもあります。

手術をして、ちゃんと取り除くことができれば

9割は良性(転移なし)。

注意しなくてはいけないのは、薬。

低血糖症状や自律神経症状のせいで、

インスリノーマと分かる前に

精神科に通院していることがあります。

薬の飲み合わせには意外な禁止・禁忌がありますから、

しっかり確認してくださいね。

 

2 胆嚢の異常

続いて胆嚢。

脂質消化酵素リパーゼの働きを助ける

胆汁酸の待機・濃縮場所です。

胆汁酸の産生地点は肝臓ですから、

間違えないようにしましょうね。

胆道は、

胆汁が肝臓で出来てから十二指腸に出るまでに通る道。

胆管は、肝臓外に出てから胆汁が通る管です。

意外と問題が起きやすいところですよ。

 

胆道が先天的におかしくなってしまうことがあります。

胆道低形成や胆管閉塞があると、

閉塞性黄疸と灰白色便が出ます。

赤ちゃんの生理的黄疸は、

ヘモグロビン作りかえなので溶血性黄疸の一種。

閉塞性黄疸は色素が詰まった(流れにくい)から、

血液中の色素が多すぎて黄疸、

便に色素が出ないから灰白色便です。

このときは手術(場合によっては肝移植)になります。

 

胆嚢周辺の腫瘍は、胆嚢本体にも胆道にも生じます。

どちらも主に腺がんです。

初期には痛みがありませんが…

黄疸・体重減少・食欲低下から見つかるころには

進行していることも多いですね。

がんマーカーのCEA、CA19-9が出るのが基本ですが、

出口付近(十二指腸のファーター乳頭付近)に

できるとマーカーが出ないことも。

これも手術してしまうのが一番です。