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11 精神のおはなし(2)双極性障害、統合失調症、物質使用障害、ストレス障害(3)

以前は、体の中で何が起こっているのか分からず

精神病棟への長期入院で対処していましたが、

それによって社会と隔絶され、

結果として居場所が

病棟内しかなくなってしまったことはご存知の通り。

現在は薬物療法と精神療法、

それにリハビリテーションを加える治療が主流です。

ここのお薬も、少々説明が必要ですね。

 

統合失調症の治療に使われる薬が「抗精神病薬」です。

目的は「妄想や幻覚といった陽性症状を改善」し、

「陽性症状から生じる混乱や興奮を軽減」して、

「陰性症状を改善して、再発を予防すること」です。

陽性症状は、よく見ると

大脳の神経細胞が暴走している状態に見えます。

このときの頭の中では、

神経伝達物質のドーパミンが過剰に出ています。

「ならばドーパミンの働きを邪魔すれば、

陽性症状が止まるのでは?」ということで

作られたものが定形抗精神病薬です。

実際にドーパミンの働きを邪魔すると、

邪魔のやり方によって

「幻覚・妄想を止めるのによく効く」ものや

「混乱や興奮を止めるのによく効く」ものができました。

「万歳!」といいたいところですが…

やはり副作用が出てしまいました。

「抗精神病薬特徴副作用(錐体外路症状)」と

呼ばれる副作用です。

 

代表的なものは4区分。

「アカシジア(静座不能)」「パーキンソン症状」

「ジスキネジア」「ジストニア」です。

アカシジアとパーキンソン症状についてはもう分かりますね。

アカシジアは抗うつ薬の副作用で出てくる

「アクチベーション症候群」。

パーキンソン症状については

前回のパーキンソン病のところでおはなししてあります。

これらは神経伝達物質セロトニンの回復と

ドーパミンの抑制で出てきてしまう身体症状です。

 

ジスキネジアは口周りの筋肉が勝手に動いてしまうもの。

ジストニアは筋肉の一部がこわばってしまうものです。

意図的に大脳が命令する筋肉への信号が通るところが

「錐体路」ですから、

「錐体外路」とある以上、

無意識(意図しない)動きであることも分かります。

 

これらの動きが、本人の意思とは無関係に出ると、

他の人から見て「何をしたいのか分からない」

「怖い」という印象を持たれがちです。

だからこそ、相手との関係性に対する

精神療法等も必要になってくるのです。

当然、これらの副作用を改善した

「非定型抗精神病薬」も作られました。

認知機能改善にはよく効きますが、

陽性症状への効きは穏やかです。

陽性症状に特化した定型抗精神病薬は

メジャートランキライザー、

そうではない非定型抗精神病薬は

マイナートランキライザーとも呼ばれますよ。