6 ウイルスの変異(2)
さて、ようやくここでのメイン
「ウイルスの変異」のおはなしに到着です。
ウイルスは増えるときに、細胞内の材料と道具を使います。
数でイメージしやすいように、
ウイルスの遺伝情報が50塩基で出来ていたとしましょう。
細胞に入って、いざ増殖してみたら…
「塩基が31個(や29個)!」ということが起こりえます。
始めがずれたのか、終わりがずれたのか。
はたまた、どちらもずれているのか分かりませんが。
増殖の結果塩基が増え(もしくは減って)、
「今までとは違うウイルス」ができることがあるのです。
これが「変異」です。
また「増殖したら塩基は30個だけど途中の塩基が違った!」
ことも起こる可能性があります。
これも今までのウイルスとは何かが違う「変異」ですね。
塩基1個の違いがタンパク質の違いにつながりうることは、
生化学の鎌状赤血球症のところでおはなししましたね。
赤血球全体の形が変わる大変化が、
たった1つの塩基の違いから生じていましたよ。
ウイルスの遺伝情報をもとに出来た殻の部分
(タンパク質)が変わるということは、
そこに対応していた抗体や薬、
ワクチンが効かなくなるということです。
そしてこの変異、
DNAウイルスよりもRNAウイルスで頻繁に起こります。
DNAは2本鎖で丈夫。
コピーミス(塩基の相補的組み合わせ)があっても
直せるように酵素もありました。
かたやRNAは1本鎖でもろく、
コピーミスがあっても直せる酵素がありません。
そもそも酵素だけあっても、RNA自体が1本しかない以上、
DNA(2本鎖)のように「(基準と)向かい合わせて、
ずれていたら新しく作った方を直す」こともできませんね。
「RNAはDNAと比べて変わりやすく、
直す仕組みもない。
だからRNAウイルスは変異しやすく、
抗体や薬を作りにくい…」
はい、よくできました。
あとはインフルエンザのタンパク質亜型のように
「まとまった部分」が入れ替わる変異(不連続変異)も起こります。
先程までの「1塩基変化」は、「連続変異」ですね。
不連続変異は1つの細胞に複数のウイルスが入り込んで、
混ざり合ったときに起こる可能性があります。
特にヒトにかかるウイルスが豚や鳥に感染すると、
豚や鳥に感染するウイルスとの間で
不連続変異を起こす可能性が出てきます。
もちろん不連続変異によってもタンパク質が変化して、
抗体や薬、ワクチンが役立たずになりますよ。