5 ケース5:たかが検査、されど検査(4)
「どうすればアウトにならずに済むのか」
まずは、医師の立場から考えてみましょう。
裁判所は「ヤバい結果を避けられたのに、あえて避けなかった」から、
事件の医師Cをアウトにしました。
これをどう受け止めましたか?
「そんなこと言ったって忙しかったんだよ!」
おそらく、この反応になると思います。
あなたに時間がないのは重々承知。
ならば…
①ほかにルンバールをできる人は誰もいませんか
②じっとしていてもらう手段は何もないですか
この2点を考えてみましょう。
①について。
ルンバール自体は、そこまで難解な手段ではありません。
指導を受け、一定の経験を積んだ医師ならだれでもできる手段です。
それなら、あなたの勤務時間内にルンバールを頼める他の医師がいるのでは?
他の医師に迷惑をかけることを心配する人がいるかもしれません。
でも、現代医療はチーム医療。
困っているときには助け合う、これでいいじゃないですか。
では、個人病院で他の人に頼めないときや、
他の疾病で担当医師がルンバールをする必要性が高いときには?
そのときは血圧の上がっている時間をずらしてルンバールです。
学会等の用事の、優先順位を下げてください。
ここについて、いろいろご不満もおありのことと思います。
でも、医師は何のためにいるのですか?
患者の病気を治すため、ですよね。
学会等の用事は、極論すれば謝れば済む話です。
人の生命・身体・精神は謝って済む話ではありません。
どちらの優先順位が高いかは、冷静に考えればわかるはずです。
②について。
時間は変えたくない、他の人にも頼めない。
食事の時間は、あらかじめずらせば何とかできます。
寒冷刺激を避けることも、難しくないはず。
ならば、運動後と交感神経優位を対策しましょう。
どちらも「泣いて暴れる」状態を回避すればいいのですよね。
…でも、これは結構問題。
こどもに説明をして、
ちゃんと納得してもらえてもいざ注射器が見えると大泣き…よくあることです。
仕方ありませんよね、痛いし、怖いんですから。
だったら、痛く・怖くなくしましょう。
麻酔や鎮静剤を、ルンバール前に検討してください。
怖がらずにおとなしくしてくれれば、交感神経優位を避けられます。
「動いていたせいで、ルンバールに何回も失敗!」
なんて状態も防げますね。
ここまで考えても「時間がない!」と言いますか?
こんなふうにできることがあったからこそ、
裁判所は「避けられたでしょ?」と医師Cを非難したのです。
では、次回は看護師にできることについて考えていきますよ。