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5 ケース5:たかが検査、されど検査(5)

「どうすればアウトにならずに済むのか」看護師編です。

 

看護師にできることは何でしょう。

看護師は人の「身体」と「精神」を「看る」職業です。

そして患者さんの安全と安楽を第一に考えなくちゃいけません。

…ケース5のA、危険だし、安楽でもありませんでした。

こんなとき、どうしましょうか。

 

まず、医師に進言してください。

頭では分かっていても、そのときだけ危険判断が抜け落ちているかもしれません。

「今、ルンバールをしては危険ではありませんか?」

もちろん、なぜ危険なのかは説明できるようにしておいてくださいね。

患者の血管のもろさ、ルンバールの髄液圧変化、

血圧上昇行動の可能性…これで看護師の進言根拠としては十分です。

 

残念ながら、進言に耳を貸さない頑なな医師もいることでしょう。

それなら、他の人に進言をお願いしてください。

あなたの言葉には耳をかさずとも、

他の人の言葉なら耳を貸す人もいるかもしれません。

師長さんの言葉なら、立ち止まる人がいるかもしれませんよね。

患者さんの安全・安楽のためにできることです。

ぜひ、進言を依頼してください。

せっかく安全・安楽を進言したのに…

病室に行ったとたん患者さん泣き出しちゃって…

医師に「やるから押さえろ!」なんて言われちゃったら?

 

まだあきらめないでくださいね。

どんな状況を避けなくてはいけなかったか、思い出してください。

避ける対象は、寒い、食事後、暴れて泣いている交感神経優位状態でした。

寒さは毛布等で適切な保温ができます。

食事は時間をずらすか、時間ずらしの進言。

一番問題になるのが暴れて泣いている状態です。

交感神経優位は、緊張・痛みといったストレスからも生じます。

つまり、いざ穿刺する緊張と

穿刺の痛みからも簡単に交感神経優位状態は起きてしまう…ということです。

 

どうしろと?

穿刺しない選択肢はないんでしょ?

 

こんなときには、副交感神経系優位状態にしてあげましょう。

リラックスすれば、緊張しにくくなり、痛み自体も感じにくくなります。

「…注射針を目の前にして、リラックス?」

難問ですが、やり方はありますよ。

深呼吸です。

何回か深呼吸をすれば、腹式呼吸による副交感神経のスイッチが入ります

同じように副交感神経系優位に誘導してくれる行動に

「赤ちゃんを寝かしつけるようにやさしく頭をとんとんたたく」

「音楽に集中させる」もありますね。

加えて「好きなぬいぐるみを抱える」「親にそばにいてもらう」などの

心安らぐ環境を作り出しましょう。

それから、ルンバールの援助に入ってください。

ほんの少しであっても、

患者の安心と安楽のためにできることはあるのです。

 

この検査は何のため?

患者にどんな影響、どんな危険が起こる可能性?

患者の安全と安楽は?

日々の業務は忙しさに流されてしまいがちです。

それでも、やっぱりときには基本に立ち戻って考えてみてください。