10 核酸・遺伝子のおはなし(8)

今回は遺伝子治療・遺伝子組み換え食品の原理のおはなし。

「逆転写」を理解するにはもってこいですよ。

 

遺伝子治療や遺伝子組み換え食品が作られたのは、

「欠けている遺伝子(設計図)を外から入れればいいのでは?」からです。

収穫量の多い品種に、虫に強い遺伝子を入れたらどうか。

特定の遺伝子が働かずに病気になっている人に、

その遺伝子を後から入れてあげたら病気が治るのではないか…ですね。

 

では、そのメカニズムを遺伝子治療を例にとって簡単に説明。

使うのは遺伝子を運んでくれる「ベクター(運び屋)」です。

ベクターには、ヒトに悪さをしないようにしたウイルスが使われます。

ウイルスの中に、入れたい遺伝子(RNA)を入れておくのです。

ウイルスの中にあるのはRNAと逆転写酵素だけ。

他の細胞の中に入らない限りは、

自分が増えることすらできないのが特徴です。

 

ベクターをヒト体内に入れると、

ベクターが細胞内に入り込み、細胞内にある塩基等を利用して「逆転写」を始めます。

逆転写とは、RNAをもとにDNAを作ること。

入れたい遺伝子のDNAがここで完成します。

あとはDNAのかけらを見つけたDNAのお直しサービスが

「あれ?こんなところに欠片が。どこの情報が欠けてるのかな?」と

正しい場所に入れたい遺伝子をはめ込んでくれます。

こうして核内にあるDNAに「正しい情報」として組み込まれれば、

あとは正しいタンパク質ができるはずです。

遺伝子組み換え食品も基本は同じ。

この技術によって病気に強くておいしいものがたくさんとれる…というわけですね。

 

でも、この遺伝子操作技術は広まっていません。

ヒトの病気でも重度な免疫不全疾患「アデノシンデアミナーゼ欠損症」には使われてきましたが…

それ以外には治療方法として採用されていないはずです。

理由は「何が入ったかわからなくて怖いから」だと思います。

RNAはお直しサービスのない設計図でした。

DNAに逆転写されるまでに、何が起こっているかわかりません。

また、今まで作れていなかったタンパク質が作れるようになったとしましょう。

この時点で少なくとも「ベクター内の情報はDNAに組み込まれた」ことは分かります。

でも他に何か変な情報が入ったかどうかは、すぐには分かりません。

もしかしたら生命に悪影響が出るかもしれません。

しかも、すぐには表面に出てこないかもしれません。

分からないことばかりで…「怖い」ですね。

この「怖い」が、遺伝子組み換え食品が広まらない理由だと思います。

 

どうして「遺伝子組み換え食品ではない」と表示されることが要請されているのか。

どうして遺伝子治療は特定の病気に制限されているのか。

あなたがどのように考えるかは自由です。

少なくとも「基本にある原理:逆転写」は理解してくださいね。

RNAの設計図としての変わりやすさも理解できれば、いうことなしですよ。

この分野に興味のある人は、自分で情報を探してみてくださいね。