10 各論4:細菌(1)球菌のグラム陽性(2)
B レンサ球菌
増えると鎖のように連なる(連鎖する)ので、レンサ球菌。
ここもそれなりに多くの菌がいる分類。
虫歯のもとになるミュータンス菌が代表の「口腔レンサ球菌」、
生物の実験でおなじみの「肺炎球菌(肺炎双球菌)」、
牛乳の殺菌指標になる「ストレプトコッカス・アガラクティエ」と、
「化膿レンサ球菌」がいるところです。
看護師国家試験にとって大事なのは化膿レンサ球菌ですね。
実は、結構別名が多い菌です。
研究者のランスフィールドさんの分類ではA群に分けられるので、
「A群レンサ球菌」とも呼ばれます。
そして血液の入った培地で増殖させると、
増えたコロニーの周りが溶血する
(赤血球の赤から緑~透明に変わる)ので
「溶血性レンサ球菌(溶レン菌)」とも呼ばれます。
健康な小児の咽頭を見ると、15~20%にいるとされる化膿レンサ球菌。
増殖して悪さをし始めると、急性咽頭炎や急性扁桃炎を引き起こします。
咽頭炎だけでなく、そこに全身性の赤い発疹が出てしまうと猩紅熱。
皮膚だけで悪さをすると膿痂疹ですね。
黄色ブドウ球菌による「伝染性膿痂疹」とは区別しておきましょう。
そして何より怖いのが「劇症型A群レンサ球菌感染症」。
急に発症し、
やわらかい組織の細胞を殺していってしまいます(軟部組織壊死)。
そこから敗血性ショックを起こして、多臓器不全(MOF)へとつながり…
日本では約3割が死に至ると言われています。
「人食いバクテリア」の異名もありますね。
これらの病気に続いて、
さらに急性糸球体腎炎やリウマチ熱を起こすこともあります。
急性糸球体腎炎は、
化膿レンサ球菌と抗体が1つになった抗原抗体複合体が
糸球体に沈着してしまうから。
リウマチ熱は…自己免疫疾患で、
微生物とは本来関係ないはずなのですが。
化膿レンサ球菌が悪さをした後に起こることが多く、
「化膿レンサ球菌に対する抗体が、
自分の正常細胞にも反応してしまうからではないか」と考えられていますね。
残りのレンサ球菌は簡単に。
ストレプトコッカス・アガラクティエは、
ランスフィールド分類によるとB類レンサ球菌。
産道で新生児感染を起こすと、
新生児が肺炎・敗血症・髄膜炎を起こしてしまいます。
それは大変なので、妊婦全員に保有検査が義務付けられています。
肺炎双球菌には、薬剤耐性を持ったものもいますね。
ペニシリンに耐性を持ってしまったものを「PRSP」と呼ぶことを
頭の片隅に入れておきましょう。
C 腸球菌
腸にいる球菌なので、腸球菌。
以前は「D群レンサ球菌」とされていたグループです。
腸内の常在菌ですね。
そして便に出るので、
水が糞便汚染されていないかの指標として使われます(糞便汚染指標菌)。
普段悪さをするものではありませんが、
尿路に入り込んでしまうと(尿路感染)、
菌血症のもとになってしまいます。
特に肛門と尿道口の近い女性では、
用を足した後の拭く方向に要注意ですね。
主に、院内感染で問題になってきます。
院内感染でさらに怖い薬剤耐性菌(バンコマイシン耐性腸球菌:VRE)も
いることに注意!