11 各論5:細菌(2)桿菌のグラム陰性(3)
B 通気性菌と嫌気性菌(+αしてらせん菌)
桿菌のグラム陰性菌、通気性菌と嫌気性菌のグループに入ります。
後半では、桿菌が曲がった形のらせん菌のおはなしにもなります。
大腸菌はじめ身近でありつつ、
強い病原性を示すものも多いのであまり会いたくないグループかもしれません。
進行順としては「腸内細菌科」、
「ヘモフィラス属」、「ビブリオ属」までが桿菌。
続いて「カンピロバクター属」、「ヘリコバクター属」がらせん菌。
そのあとはもっとしっかりねじれた「スピロヘータ」へと続いていきますよ。
(A)腸内細菌科
腸内細菌科はその名の通り、腸にいることが多い細菌の一群。
でも腸管以外のところにいることもあります。
そしてヒトの腸に入ったら病原性を示すものもいますからね!
(ⅰ)大腸菌
とても身近な腸内細菌科代表が大腸菌。
各種実験でも良く使われていて、「E.coli」とあったら大腸菌のサインです。
多くの種類があるものの、
大腸にいるうちは腸管内の常在細菌としてヒトと共存。
ごく一部だけが「病原性大腸菌」として悪さをすることになります。
水溶性下痢を起こす腸管病原性大腸菌。
コレラ様(米のとぎ汁のような下痢:ビブリオ属のところで)の
下痢を起こす毒素原性大腸菌。
これは海外旅行に行ったとき下痢を引き起こす
「旅行性下痢症」の主原因です。
赤痢(血性、膿性便:大腸菌の直後で)に似る腸管組織侵入性大腸菌。
血球を集めて(凝集させて)下痢を起こす腸管凝集付着性大腸菌。
そしてO157-H7に代表される腸管出血性大腸菌です。
腸管出血性大腸菌はベロ毒素を作って、タンパク質の合成を邪魔します。
その結果が出血性大腸炎。
腸管だけでなく急性脳症や、
腎臓で溶血性尿毒症症候群(HUS)を誘発する困りものです。
一般に常在している大腸菌も、
腸管から出たらヒトに悪さをしてしまいます。
尿路感染症や新生児髄膜症のように、
腸管から出たところで起こる感染は「異所性感染」と呼びますよ。
これら大腸菌による症状に対しては、主に対症療法になります。
下痢で体液を喪失していますから、水分とミネラルの補給が大事ですね。
アシドーシスにもちゃんと対応してください。
あとは感染場所に応じた薬が使われるはずですよ。
(ⅱ)赤痢菌
お次は赤痢菌。
胃酸に強く、ヒトやサルの一部(霊長類)にしか感染しない細菌です。
感染者の便から水・食物・手指を経由して体内に。
大腸上皮細胞に入り込み、
細胞内で増えると血性・膿性の便(赤痢)が出ます。
お腹が痛いのに便がほとんど出ない
「しぶり腹(裏急後重)」も特徴的ですよ。
小児で重症化し、意識障害や循環不全も出てしまうと
短期間で死の危険が高まる「疫痢」とも呼ばれます。
上下水道化で対策ができるため、現在日本国内にはいない輸入感染症。
でも近年のグローバル化に加え、
多剤耐性菌が多いことからすると決して軽視はできません。