14 各論8:ウイルス(2)RNAウイルス(1)
2、RNAウイルス
A フラビウイルス科
フラビウイルス科はエンベロープ付きの正二十面体ウイルス。
ヘパシウイルス属とフラビウイルス属がここに含まれます。
B型肝炎ウイルスに続くおはなしの流れから、
C型肝炎ウイルスのいるヘパシウイルス属から始めますよ。
(A)ヘパシウイルス属
ヘパシウイルス属の代表は、C型肝炎ウイルス(HCV)。
血液感染をするので、B型肝炎ウイルスと注意点は一緒ですね。
C型肝炎ウイルスは、
B型肝炎ウイルスよりも感染力自体は低いですよ
(HBVの1/10~1/2)。
大事なところは「抗体ができるまでに3か月かかること」、
「ワクチンがないこと」、そして
「成人でも持続感染になりやすい(約70%が持続化)」です。
インターフェロンをはじめとする多剤併用療法がとられます。
感染症法5類の全数報告(7日以内)であることも、
B型肝炎ウイルスと同じです。
(B)フラビウイルス属
このまま肝炎ウイルスのおはなしを続けたくなりますが…
忘れる前にフラビウイルス属のおはなしです。
フラビウイルス属は、主に節足動物の媒介(感染症法4類)。
媒介生物をシャットアウトできればいいのですが。
「蚊」が媒介者に含まれているので、結構大変です。
「不顕性感染が多いけど、発症したら一大事!」が
フラビウイルス属の感染です。
蚊が媒介するのは黄熱ウイルス、デングウイルス、
ジカウイルス、日本脳炎ウイルス。
ワクチンがあるのは黄熱と日本脳炎です。
これらのウイルスの引き起こす病気は、
軽症なら頭痛・発熱等のインフルエンザ様症状で済みます。
ただし、重症化すると。
「黄熱」では高熱化、出血、黄疸、タンパク尿が出て死に至ることも。
「デング熱」の重症型
(「デング出血熱・デングショック症候群(DHF/DSS)」)では、
持続高熱化、出血、循環不全から死に至ることも少なくありません。
「ジカウイルス感染症」は末梢神経障害(ギランバレー症候群)や、
経胎盤感染で胎児に小頭症を起こす可能性がありますね。
あとは蚊以外のヒト間感染(性行為感染)報告があります。
「日本脳炎」は意識障害やけいれん、髄膜刺激症状(頚部硬直など)が出て、
30%ほどは命を奪われてしまいます。
回復しても約半数に神経後遺症(麻痺や精神障害等)が残ってしまうことに。
水鳥や豚にいるウイルスで、アジア地域に多いのが特徴です。
日本では患者数は減っているものの…
東南アジアではよく大流行を起こす、注意が必要なウイルスです。
ここまでの4つと比べると「少しだけ怖くない」のがウエストナイルウイルス。
蚊が媒介して、軽症だとインフルエンザ様の「ウエストナイル熱」。
1%ほどが髄膜炎、脳炎を起こすウエストナイル脳炎になります。
鳥と蚊を感染環とする、アフリカとアメリカで流行するウイルスです。
これら蚊媒介フラビウイルス属ウイルスによって生じる病気は、
有効な治療法は見つかっていません。
予防接種と「蚊に刺されない!」頼りになりますね。
蚊以外の媒介者はマダニ。
ダニ媒介脳炎、オムスク出血熱、キャサヌル森林病のもとになるのが
ダニ媒介性フラビウイルスです。
ロシアから東欧では、時々流行するウイルスですよ。