2 薬に共通するおはなし(1):吸収(A)の応用(2)

2019年5月2日

初回通過効果を受けない吸収方法、

お次は「坐薬」のおはなしです。

 

坐薬は子どもの熱冷ましや痛み止めとして出されることが多い、

肛門に入れる短いロケット状の薬です。

痛みの原因についてはいろいろありすぎて

ここではおはなしできませんが…

「すぐ効いてほしい」ことに違いはありませんね。

そこで坐薬を肛門に入れると、

体温でじんわりと溶け、粘膜から静脈に吸収されていきます。

 

「肛門付近の静脈」と「肝臓」…何か思いだしませんか?

 

肝臓の調子が悪いときの、迂回ルート(側副系)でしたね。

肝臓の働きが悪くなったときに肝臓を血液が通りにくくなり、

側副系に血液がたくさん流れるようになると…。

腹壁静脈の「メドゥーサの頭」、

直腸静脈の痔、食道静脈の(食道)静脈瘤がキーワードでしたね。

ここからも分かるように、

直腸静脈は肝臓に入ることなく(下)大静脈に静脈血を届けるルート。

ということは。

ここから吸収された薬は肝臓で分解される前に

全身に届くということになりますね。

これなら、薬の効果が弱まらずに痛み止めとして働けます。

 

なお、坐薬の特性上、体温以上の温度になったら溶けてしまいます。

だから坐薬は冷所保存が必要ですよ。

 

鼻の粘膜からの吸収も、初回通過効果を受けません。

「鼻に薬」というと、

花粉症等で鼻水・鼻づまりを解消するイメージがありますね。

それは鼻に不具合(変!)があって、鼻に薬を使っている例ですね。

そうではなく、

鼻の粘膜から吸収させて他のところに薬を効かせることもあります。

鼻の近くにある、

視床下部や下垂体に関係する薬の一部で使う「点鼻薬」です。

 

「鼻の近くに視床下部や下垂体?」と思った人、いますよね。

位置関係を確認しておきましょう。

視床下部は眉間のところから、

頭の中心に向かって線を引いて…中心よりも少し手前にあります。

視床下部の下が、下垂体ですね。

そして眉間のすぐそばから「鼻(鼻骨)」が始まっています。

鼻の奥(鼻腔)はかなり上の方まで広がっていることは、

横からの断面図を見るとすぐ分かるはずです。

意外なほど、鼻腔と視床下部・下垂体はご近所さんなのです。

 

だから、視床下部や下垂体ホルモン関係では

鼻経由で薬を届けることがあります。

 

例えば、尿崩症の治療に使われるデスモプレシン。

尿崩症は下垂体後葉ホルモン、バソプレッシンの欠乏・不足で起こる

尿量が異常に多くなる病気です。

腎臓が、原尿から水分再吸収をしなくなってしまったせいですね。

水分だけを見ても、体が干からびてしまう(脱水)危険があります。

注意するところはそこだけではありませんから、

ヒトの体全体にとって「ピンチ!」な状態です。

そんな不具合(変!)を治すため、

バソプレッシンに似た形の薬デスモプレシンの出番です。

デスモプレシンを体に入れると、

腎臓はバソプレッシンからの命令を受けたのと同様に

水分の再吸収ができるようになります。

水分再吸収ができれば、尿量は正常に近づいてくるはず。

病気の原因は解消されていませんが、

全身の細胞にとってはこれなら一安心です。

デスモプレシンを鼻の粘膜から吸収すれば、

飲み薬では避けられない肝臓の初回通過効果を受けません。

注射等の痛い思いをせずに、

早くフルパワーの薬の効果を受けられるのです。

 

吸収の工夫のおはなしは、次回以降も続きますよ。