14 各論8:ウイルス(2)RNAウイルス(6)
HTLV-1では「がん化」の言葉が出てきました。
悪性腫瘍(がん)の一部は、
ウイルスの感染が原因になって起こります。
ここで腫瘍のもとになるウイルス(腫瘍ウイルス、がんウイルス)を
まとめておきましょう。
ついさっきおはなししたHTLV-1が、成人T細胞性白血病。
B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスが、肝がん。
ヒトパピローマウイルスが、
子宮頚がんや肛門(直腸)がん、陰茎がん、中咽頭がん等。
ヒトヘルペスウイルス8が、カポジ肉腫(と特発性浸潤性リンパ腫)。
EBウイルスが、バーキットリンパ腫(と上咽頭がん、胃がん)ですね。
これらは細胞の増殖サイクルが何らかの形で変になって、
「勝手に増え放題モード(がん化)」してしまうもの。
個々のウイルスについての説明は、全部終わっていますからね。
まだまだ続くRNAウイルスのおはなし。
次は「予防接種に関係するウイルスたち」の紹介をしていきましょう。
狂犬病ウイルスのラブドウイルス科、風疹ウイルスのトガウイルス科、
麻疹ウイルスとムンプスウイルスのパラミクソウイルス科、
インフルエンザウイルスのオルトミクソウイルス科の順で行きますよ。
F ラブドウイルス科
ラブドウイルス科の代表は狂犬病ウイルス。
日本では飼い犬登録とワクチン接種、
野犬の取り締まりで現在存在していませんが…。
世界には広く分布し、現在でも多くの死者が出るのが狂犬病です。
輸入症例が多い、感染症法4類感染症ですね。
「狂犬」とありますが、犬だけにいるウイルスではありません。
ネコやキツネ、リスやアライグマ、コウモリ等にもいて、
これらに「かまれる(だ液によくいる)」ことで感染です。
侵入部の末梢神経から、上の方(中枢神経)へと進んでいきます。
だいたい1~2か月の潜伏期間を経て、
発熱、頭痛、全身倦怠感の前駆症状が出て…。
不安・興奮等の狂躁症状や神経麻痺が出てくると、立派な狂犬病。
こうなってしまうと有効な治療法はなく…命を奪われてしまうことに。
狂犬病を防ぐためには「(動物や患者さんに)かまれないこと」です。
ワクチンもありますから、
海外旅行時にはちゃんと接種しておいてください。
また、発症前ならワクチンで発症を防ぐことができますので
「『出来る限り早く』ワクチンを接種」ですよ!
なお「狂犬病だと水を嫌がる」と言われますが、
水を飲むときに嚥下筋がけいれんを起こしてうまく飲めない
(同時に喉頭蓋でふたをしているので呼吸も苦しくなる)
こと(「恐水発作」)のせい。
水一般を怖がるものではありません。
同じように「光や風も嫌がる」とされるのも、
不安・興奮による狂躁症状が
些細なきっかけで起こっているにすぎませんよ。