2 総論:ヒトと微生物の関係(1)
微生物をヒトとの関係で考えるとき、
「ヒトに悪さをするもの」と
「ヒトに悪さをしないもの」に分けることができます。
「ヒトに悪さをするもの」は、
病気のもとになるということで「病原性がある」といいますね。
「病原性大腸菌O-157」は名前からして分かりやすい一例。
下痢症を引き起こして、給食施設等で発生して大問題になる菌です。
「ヒトに悪さをしないもの」の中にも、
「悪さをするものに変わるもの」と、
「普段いるところから出たら悪さをするもの」がいます。
「悪さをするものに変わるもの」の例が日和見菌と呼ばれる一群。
「普段いるところから出たら悪さをするもの」の例が、
一般的な大腸菌ですね。
…悪さをするものばかり先に紹介してしまいましたが。
「ヒトに悪さをしないもの」だってちゃんといますよ。
「常在細菌」のおはなしをしますね。
私たちの皮膚や消化管(特に口腔内と腸管内)、
膣内には常に細菌がいます。
「常にいる(在る)」ので、「常在細菌」です。
彼らがいることで、ヒトは何ら害を受けません。
むしろ細菌たちがいてくれることで、
ヒトの生命・健康が守られているのです。
…別に常在細菌は「ヒトのためになろう!」として
人の役に立っているのではありません。
「細菌が増える」その結果、「実はヒトの役に立っていた」だけです。
特にヒトにとって役に立つ細菌を「善玉菌」と呼ぶことがあります。
代表は、腸内細菌のビフィズス菌。
酸を産生することで腸内環境を一定に保ち、
病原性の細菌が増えにくい環境を作ってくれます。
また、生化学で勉強した
「ビタミンB6やビタミンKを作ってくれる」細菌も善玉菌ですね。
腸内細菌が本気を出す前(ビタミンK産生不十分)なので、
新生児メレナ(腸管から出血して黒色便)に注意…
生化学の復習だけでなく、小児看護でも出てくるおはなしですよ。