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1 総論:微生物の大まかな分類(3):細菌の細胞小器官

細菌の、とりあえずの分類終了。

細菌は原核生物なので、「核」ではなく「核様体」があります。

真核生物とは違い細胞内の細胞小器官は充実していませんが、

外側の細胞小器官はたくさんありますよ!

 

乾燥に耐えるための細胞壁だけではありません。

多くの細菌は、

周囲又は他の生物から栄養を取らないとうまく増えることができません。

だから良い環境へと向かい、他の生物(細胞)にくっつくための

「移動」と「接着」に特化した部分があります。

 

移動に役立つのが鞭毛。

鞭(むち)のように太い毛が1本以上生えています。

これをうねらせることで、

生きやすい・増えやすい環境へと移動します。

それでも良い環境にたどり着けないとき、

一部の細菌は胞子のような休眠形態を作ります。

それが「芽胞」。

これ、大事なキーワードです。

あとで消毒のおはなしをするときに、

芽胞に効くか否かが大問題になるのです。

「芽胞はちょっとやそっとでは壊せない!細菌が生き残っちゃう!」

このことを覚えておいてくださいね。

 

接着に役立つのが莢膜と線毛。

莢膜は水と仲良しな多糖で「べたつく」膜。

他の生物にピタッとくっつきます。

線毛で他の生物にしっかりとしがみついて、

もう放しません(定着線毛)。

これで栄養を確保して、安心して増殖に励めるというものです。

細菌どうしがつながって情報を受け渡す

接合線毛(性線毛)もありますよ。

 

さて、先程「多くの細菌は」といいました。

残った一部の細菌は、

一定の環境なら自分1人で栄養を作って生きていけます。

まるで植物のようですね。

植物のように光エネルギーを同化して栄養を作るのが光合成細菌。

火山や温泉のような

熱エネルギーを同化して栄養を作るのが化学合成細菌です。

そして無機物(窒素やアンモニウムイオン等)から

栄養を作り出せるものが無機栄養細菌。

有機物(炭素を基本構造とするものの多く)からしか

栄養を作りだせないものが、

有機栄養細菌です。

ヒトにとって病気のもととなる(病原性のある)細菌は、

有機栄養細菌になりますよ。

 

だから、いざ「細菌を増やそう!」と思ったら、

その細菌が増えることのできる環境を作ってあげないといけません。

看護師が直接関与するところではありませんが、

「培養」に関係するおはなしですね。

でも、患者さんの身体でどの細菌が悪さをしているのかを知るために

「検体を取って培養をする」ことは日常的に行われます。

採血(血液)は「検体」の一種。

もっと簡単な「尿」や「細胞採取(鼻腔粘膜等)」も「検体」ですね。

 

次回は、細菌の増やし方をもう少し見ていきましょう。