4 総論:免疫(1)自然免疫
免疫は、異物の侵入から体を守る働き。
皮膚や粘膜による物理的防御や、
胃酸や酵素による化学的防御を抜けられた後のおはなしです。
先に接触感染のところでおはなししたように、
粘膜は防壁としてはちょっと弱め。
だから免疫担当のリンパ球がすぐそばで待ち構えています。
それが「粘膜関連リンパ組織」。
代表は扁桃腺が含まれる上気道の「鼻咽腔関連リンパ組織」。
下気道にも「気管支関連リンパ組織」がありますよ。
「吸収」を担当する粘膜(腸管)では、
もっと積極的な侵入者対策が練られています。
もう少しおはなしがすすんだら、紹介しますからね。
主に担当してくれるのは白血球の仲間たち。
好中球やマクロファージといった貪食細胞が、
異物を食べて(貪食)処分してくれるのが「自然免疫」です。
同じく貪食作用があるものとして樹状細胞とクッパー細胞があります。
樹状細胞は「貪食」できるものの量は少なく、
抗原提示(侵入者監視)特化。
クッパー細胞は肝臓にいるマクロファージのこと。
小腸で吸収された栄養は、門脈を通って肝臓に流れ込みますね。
栄養と一緒に微生物が侵入してきたとき、
肝臓で待ち構えて貪食するのがクッパー細胞の役目です。
とはいえ、あまりに微生物の量が多いと
クッパー細胞の負担が大きくなってしまいます。
「腸管での侵入者対策」は、やっぱり大事ですね。
リンパ節の中でも、一番大変なのは「吸収担当」の腸管。
栄養物の吸収が腸管(特に小腸)の本来の目的ですから、
「微生物だけ吸収しない」なんてやり方は非効率的です。
だから微生物がわざと入り込みやすいところを作り、
そのそばでリンパ球が待ち構えていることにしました。
そこが「パイエル板」です。
パイエル板の腸管表面では絨毛のないM細胞が
「わざと入り込みやすいところ」を作ります。
そしてM細胞が(トランスサイトーシスによって)
微生物をリンパ球待機所へとご案内。
マクロファージや樹状細胞が貪食して、リンパ球に抗原情報を提示。
すぐにこれをもとにしたIg-Aが作られて、腸管内へと分泌です。
パイエル板にいるリンパ球のことを
「上皮細胞間リンパ球」と呼ぶこともありますね。
パイエル板にいる白血球たちは、
胃や小腸の消化管ホルモンを作っている
細胞や消化管担当の神経(自律神経系)と
ネットワークを作っています。
「すぐ外に微生物を出してほしいから、
消化管ホルモンの分泌は止めておいて!
下痢や嘔吐、急いでちょうだい!」
「微生物はいるけど、これなら処理可能!
消化管ホルモン、ちゃんと出していいからね」
…こんな風に「吸収」をめぐる情報を
共有・連絡しているとイメージしてください。
「腸が第二の脳」と呼ばれる理由の1つは、
免疫をめぐる神経系を含むネットワークがあるからですね。
でも、異物が入ってくるたびに「食べる」だけでは、
異物の量が多いと押し切られてしまう可能性があります。
異物を捕まえておいてくれる(印付けをして、無力化しておく)
抗体を作る必要がありそうです。
それが獲得免疫ですね。