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4 総論:免疫(5)徴候・症状

次に、微生物の毒性による徴候や症状のおはなし。

徴候は客観的に見つけられる違い、

症状は主観的に感じ取れる違いと分けられますね。

他人から見て分かれば、

徴候であると同時に症状でもあることが多いです。

本人にしか分からない症状として「気分が悪い」「痛い」などがありますよ。

 

徴候で分かりやすいのは「膨れてる!(発疹)」。

水膨れ(水疱)や膿だまり(膿疱)があったら、そこが感染地点!

とても多くの種類の微生物侵入で見られますよ。

水ぼうそう(水痘)や手足口病、単純ヘルペスや膿痂疹

…全部は書ききれませんね。

 

また「赤い!(紅斑)」も分かりやすいですね。

微生物の毒素が原因のことも、免疫反応によることもあります。

毒素によるものとしては

「黄色ブドウ球菌による毒素性ショック症候群と剥奪性皮膚炎」、

「化膿連鎖球菌の猩紅熱」が代表的。

免疫反応によるものとしては「風疹」と「麻疹」を押さえておきましょう。

 

そして介在生物がダニのとき、その噛み傷が残ることがあります。

ツツガムシ病の黒色痂皮、ライム病の輪状紅斑がそうですね。

 

また、皮膚や粘膜が黄色く染まってきたら「黄疸」。

ウイルス性肝炎や黄熱、マラリアで出る徴候です。

黄疸の原因は赤血球の溶血と肝臓の機能障害。

ヘムからビリルビンができて、

腸管に排出されるまでのイメージはできていますか?

あやふやな人は、生化学や解剖生理学で復習しておきましょう。

 

リンパ節の腫脹や肝脾腫も微生物による徴候の1つですね。

リンパ節の腫脹は

「まさに、今ここで、リンパ球頑張ってる!」という証拠。

腺ペストのリンパ節腫脹は「横痃:おうげん」と呼ばれますね。

リンパ節を突破されると、次の戦場は肝臓と脾臓になります。

そこでもリンパ球が頑張ると…肝脾腫ですね。

 

このように全身で白血球の防衛線が始まると、

各所で応援要請がかかります。

炎症性サイトカインが各所で出て、いたるところで血管が拡張する結果、

全身をめぐる血液の圧力が下がってきます(低血圧)。

あまりに血圧が下がると、

主要器官の脳に届く血液が不足してショックを起こしてしまうことも!

そうなる前に、薬等で白血球を援護してあげる必要がありますね。

 

症状として日常的に出てくるのは「くしゃみ・せき」と「嘔吐・下痢」です。

くしゃみやせきによる微生物追い出しがうまくいかずに感染が始まると、

せき(咳嗽)で体外に出す痰の色が変わってきます。

黄色でドロッとしてきたら(黄色膿性)、呼吸器系の感染ですね。

さらに悪い匂いがしたら、嫌気性菌による感染の可能性。

鉄さび色の痰だったら、肺炎球菌による感染の可能性があります。

もし痰に血が混じっていたら(血痰)、

肺結核や肺がんの可能性がありますからね!

 

痰を押し出す咳は、

痰に含まれる水分のせいで湿性咳嗽(ゴホンゴホン、ゲホゲホ)。

乾いた咳は乾性咳嗽(コホコホ、コンコン)ですからね。

 

嘔吐や下痢も、消化管からの微生物追い出し。

血液pHの変動と、水分補給の必要性をお忘れなく。

 

感染が持続すると、腎臓や神経にも悪影響が出てきます。

腎臓の尿を作る機能が害されると、乏尿や無尿が起こります。

「化膿連鎖球菌による急性腎不全」や、

「腸管出血性大腸菌による溶血性尿毒素症候群」が代表ですね。

うまく尿を作れないということは、

うまく血液中の不要物を体外に捨てられないということ。

一刻も早く、適切な治療が必要です。

 

神経の働きが変になってしまうのが「神経麻痺」や「けいれん」。

筋肉に収縮命令を送り続けてしまう

痙性麻痺(破傷風や狂犬病で起こる)や、

筋肉に収縮命令を送れなくなってしまう弛緩性麻痺

(ボツリヌス菌感染やポリオで起こる)ですね。

けいれんは脳やそれを取り巻く髄膜で炎症が起こったせいで、

異常な電気興奮が起こってしまったもの。

中枢の神経細胞のパニック状態です。

小児では炎症の場所に関係なく、

「単に熱が出た」だけでもけいれんを起こすことがありますよ

(熱性けいれん)。

 

以上、炎症性サイトカインのおはなしから炎症のまとめ、

急性期反応と徴候・症状のおはなしでした。

少々長くなりましたが、

これで「微生物侵入によって熱が出る」仕組みは理解できたはずですよ。