6 総論:個人(?)レベルの侵入を減らす方法(6)
後は少し補足。
特殊な消毒薬(限定的に使われる消毒薬)です。
水銀の化合物マーキュロクロム(赤チンキ)は以前使われていましたが…
もう目にする機会はないと思います。
同じ部位・目的で使える過酸化水素
(H₂O₂:3%水溶液がオキシドール)の方が安全に扱えるからですね。
銀の化合物は硝酸銀の形で新生児の点眼
(1~2%水溶液・淋菌性膿漏眼予防)や、
プロテイン銀の形で口腔・尿道消毒に使われます。
尿道消毒には
過マンガン酸カリウム(KMnO₄:0.02~0.5%水溶液)が使われることもあります。
あと、弱酸や弱アルカリも消毒に使われますね。
ホウ酸(H₃BO₃:~2%)は、点眼・洗眼に使うことがあります。
0.5~5%の酢酸も消毒に使われることがあります。
一般的な食酢は5%以上の酢酸。
だから酢漬け(ピクルス)は微生物の繁殖を抑えて長期保存食品になるのです。
サリチル酸は皮膚(特に真菌症に対して)使うことがありますよ。
酸化カルシウム(CaO:生石灰)は20%の水溶液にして
下水や汚物消毒に使われます。
生石灰は水を吸って発熱するので、非常食を温めるときに使われます。
逆にそこまで熱を持ってしまうので、消毒の普段使いには少々危険。
反応した後の消石灰なら、少しは安全。
学校等のグラウンドの白線引きに使われるのが消石灰です。
とはいえ飛び散りやすく、
マスクやゴーグル、手袋等でフル装備をしないと皮膚や粘膜をいためますよ。
養鶏・養豚場で感染症発生時にまかれる白い粉は消石灰。
災害後で下水逆流後の地面(や各種動物死体)消毒にも使われます。
以上が、消毒薬のおはなしでした。
消毒薬には3つのレベルがあること、
効く微生物や使える対象に違いがあること、ちゃんと理解できましたね。
皮膚・粘膜防壁があるおかげで、
そこを傷つけるか否かで
要求される滅菌・消毒レベルが変わることも整理できるはず。
ここまで分かれば、
スタンダード・プリコーションのおはなしをしてもいい頃合いです。
薬と微生物が主役だった消毒薬のおはなしから、
「ヒトの動き」も追加されたスタンダード・プリコーションに入りますよ。