6 総論:個人(?)レベルの侵入を減らす方法(9)
感染性廃棄物は、そのままゴミ箱に入れてはいけません。
いつ何時感染性廃棄物に触るか分からないのでは、
おちおちゴミも捨てられませんからね。
「これは危ないから、心して処理してね」と
明らかにするのがバイオハザードマークです。
そして中に何が入っているのかを、
マークの色で判断できるようにしてあります。
赤は液体~泥状物。
血液をイメージすればいいでしょう。
「こぼれるかもしれない感染性廃棄物が入っていますよ!」です。
橙は固形物。
使い終わった手袋やおむつ、ガーゼ等が入ります。
「こぼれはしませんが、感染性廃棄物ですからね!」ですね。
そして黄は尖ったもの(鋭利物)が入っています。
当然針に代表される鋭利物が箱の外に抜けてこないよう、
プラスチック製の専用容器を使うことになります。
だから他人の安全のために針にキャップをつけなおす
「リキャップ」をする必要などありませんよ。
ここで「針刺し事故」の怖さをおはなしする必要がありますね。
患者さんに使った後の針を自分に刺してしまうということは、
皮膚防壁を突破して微生物が侵入してくるということ。
特にHIV、HBV、HCVの感染が問題になります。
これらは各論で勉強すれば分かるように、
どれもヒトに重大な影響を及ぼすウイルスです。
その中でも感染力の特に強いHBV
(針刺し事故後の感染率がHBVは6~30%、HCVは2%、HIVは0.5%)と、
感染力はそこまで強くなくとも免疫全体に影響が出るHIVは大問題です。
針刺し事故を起こさないために、
感染性廃棄物はリキャップせずに「安全に捨てる」ことが第一。
それでも、事故が起こってしまったら。
すぐに石けんと流水で手を洗ってください。
他の医療廃棄物処理と責任者への即時報告は仲間に任せ、
まずは「手洗い」。
これで体の中に入ってしまう血液量を最小限にとどめます。
スタンダード・プリコーションで付けている手袋も、
血液量最小限化に協力してくれます。
次に責任者に急いで報告。
HIVなら針刺し後2時間以内の予防投薬が必要になります。
HBVは24~48時間以内のワクチンと免疫グロブリン投与が必要ですね。
事前にHBVワクチンを接種しておけば、
心理的にも免疫的にもほんの少し余裕ができるはずです。
針刺し事故は、その後の対応が時間との勝負になります。
ただですら忙しい実習や実務が、
それどころではなくなってしまうのですね。
だから、何より針を刺さないこと。
使った針(抜いた針)は、
「黄色のバイオハザードマークのボックスに入れるまで」が
真剣勝負ですからね!
以上、医療提供の場における
「スタンダード・プリコーション」のおはなしでした。
病原性微生物を受け取らない、運ばないために
必要なことをイメージできるようになりましたね。
でも、このおはなしは
「医療提供の場」に限定されたものではありません。
日々のうがい、手洗い等も「受け取らない、運ばない」ために必要。
専用の消毒薬を使わずとも、
表面に付いただけの微生物を水で押し流すことができます。
簡単なことですが、
「表面に付いてすぐなら押し流せる」以上、有効な手段ですからね。
以上が、微生物学の総論。
目に見えない微生物について、かなり理解が深まってきたはずですよ。
この先は個々の微生物についての各論になります。
看護師国家試験に関係が深いものを中心に
簡単にまとめていく予定ではありますが、いかんせん量が多いです。
各論の最初に進行予定概略
(この順に進む予定ですよ)を書いておきます。
「今はどの話で、どのブロックにいるのかな?」を
常に頭において読んでくださいね。