9 各論3:プリオン
原虫のおはなしが終わったので…
補足のプリオンタンパクに入りましょう。
そもそも、プリオンは生物ではありません。
遺伝情報(DNAやRNA)のない、
異常なタンパク質(感染性タンパク質)がプリオン。
生物ではないけれど、ヒトの体内で病気のもとになるので(病原性)、
ここで補足しておきますね。
プリオンは本来神経細胞の髄鞘(ミエリン)の維持に
関係しているタンパクでした。
ところが「異常!」になると、
タンパク質分解酵素で分解されにくく、
脳の中にたまっていって(蓄積)しまいます。
同時に神経細胞が変性し、脱落していくため、
脳組織がスポンジ状(海綿状)になっていくのです。
これが牛海綿状脳症(狂牛病)で、
ヒトに感染するとクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)ですね。
食肉からの感染が大問題になりましたが、
クロイツフェルト・ヤコブ病の多くは原因不明に起こる「孤発性」です。
角膜や硬膜の移植や、
医療器具等から移る医療行為感染には注意が必要ですね。
クロイツフェルト・ヤコブ病はめまい、ふらつきから始まり、
認知に変調が訪れると急に進行して寝たきりに。
異常脳波が大脳全体に出て、無言無動となり、
発症から2年ほどで死に至るものです。
非侵襲的医療行為や日常的接触では感染しませんので、少しだけ安心。
逆に針刺しには最大限の注意が必要です。
プリオンタンパクを殺せるのは、132℃で1時間のオートクレーブと、
3%のドデシル硫酸ナトリウムに5~10分浸漬くらいです。
ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)は、
タンパク質変性の力がとても強い陰イオン性界面活性剤。
当然、ヒトの細胞もタンパク質が変性されて大変なことになります。
もし手指についたら、
多量の水とセッケンで洗い流し、病院にかかる必要がありますからね!
真菌、原虫、プリオンまで終わりました。
次はとても大きなグループ「細菌」です。