2 呼吸器系のおはなし(2)
気道のちょっと詳しいおはなしに入ります。
鼻(鼻腔)から始めましょう。
鼻の内側は、粘膜で覆われていて湿っています。
この「湿っている」のが大事。
匂いを感じる(嗅覚)の場所でもありますね。
匂いは空気中に含まれる小さな粒が、嗅上皮細胞にくっつくことで分かります。
食欲に関係が深いので、消化器系の話でまた出てくるはずです。
それ以外の役割もありますが、そちらは神経系のところでおはなししましょう。
鼻の内側の奥には、もっと広い空間があります。
それが副鼻腔。
頭蓋骨の中に広がる、これまた粘膜に覆われた空間です。
副鼻腔の主な仕事は「加温と加湿」。
鼻腔でも加温と加湿はできますが、副鼻腔にはかないません。
副鼻腔は左右に4つずつ、計8個の部屋からなっています。
眉間から眉頭付近に広がる前頭洞、
目頭付近の蝶形洞、
蝶形洞の下にある篩骨洞、
頬の部分にある上顎洞…以上4部屋です。
部屋の名前は、「部屋のある骨」と一緒です。
後で骨格系のところに行ったら、思い出すことにしましょうね。
これらの広い部屋をめぐるうちに、
外から取り入れた空気は体温で温まり、粘膜の湿気で湿っていきます。
この加温と加湿は「異物の体外排出」にすごく役立っています。
どう役立つのかについては、少し先で出てきますからね。
のどエリアの咽頭と喉頭に入ります。
咽頭は喉の奥のまだ見えるところ。
喉頭は喉の…奥過ぎてもう見えません。
咽頭は空気も食べ物も通りますが、喉頭は空気しか通りません。
そんな喉頭ルートに食べ物が入っていったら「誤嚥」です。
誤嚥のせいで肺で炎症が起きると「誤嚥性肺炎」。
誤嚥についても、消化器系のところでもう1回おはなししますね。
…一度食べ物等が空気ルートに向かったら、一巻の終わり…?
そんなことはありません。
気管や気管支には繊毛という細い毛が生えています。
繊毛は入ってきた異物を口のほうへ押し戻す働きがあります。
そして繊毛が十分に働くためには、加温と加湿が必要になるのです。
副鼻腔(と鼻腔)に、しっかり感謝!ですね。
粘液にまとめられ、口のほうに押し出されてきた異物の塊が痰です。
空気の流れでも異物(食べ物も、気道にとっては異物)を押し出します。
飲食物が喉頭の方に向かいそうになって、
慌てて「こっちじゃないよ!」と空気で押し出すのが「むせ」ですね。
ちなみに、この「むせ」はヒト固有の現象です。
ヒトに近いサルではむせは起こりません。
それは、咽頭・喉頭の構造が結構違うから。
次回は、のど周りの構造を確認することにしましょう。