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11 精神のおはなし(1)せん妄、認知症、うつ病(1)

前ブロックでは、脳や脊髄といった

中枢の「変!」について勉強しました。

そこで「せん妄」「抑うつ状態」などの

聞きなれない言葉がいくつか出てきたはずです。

これらは精神機能について理解しないとイメージできない状態。

そこで今回からは精神(メンタル)の

「変!」についておはなししましょう。

 

1 せん妄・認知症

(1)せん妄

最初は「せん妄」について。

せん妄は、全身状態の影響で起こる脳の機能不全のこと。

肝臓の肝不全、腎臓の腎不全と同じ状態です。

 

せん妄には危険因子があり、環境因子があり、

そこに直接因子となる身体状況があって発症します。

中枢のところでおはなしした脳血管の

「変!」が、分かりやすい直接因子ですね。

他にも中枢神経疾患や全身疾患、アルコール等の薬物、

手術や呼吸困難等が直接因子に含まれ、

これらによる脳への血液不足(そして酸素・栄養不足)が

せん妄を引き起こします。

 

でも、同じ状態に陥っても

せん妄が起こる人もいれば起こらない人もいます。

発症の危険因子とされているのが70歳以上の人や低栄養の人。

他にも視覚・聴覚に障害のある人や

脳に疾患のある人等もせん妄が起こりやすくなります。

 

「それでもせん妄は防ぎたい!」

そんなときには環境因子のコントロールです。

せん妄が起きやすい環境因子は、日中に刺激が少なく、

夜間は照明や音のせいで睡眠が十分にとれないこと。

また身体の(強制的)安静も環境因子に入ります。

 

それならば、昼は明るく夜は暗く。

できるだけ自然に近い照明明度を心がけましょう。

照明1つ、カーテン1つでもせん妄を防ぎうるのです。

そして日中刺激として新聞やTVによる

知的・感覚的刺激なら、ベッド上安静でも可能ですよね。

今日が何月何日か分かるようにカレンダーを、

今が何時か分かるように時計を見えるところに置くことも

見当識の維持に役立ちます。

もちろんバイタルサインや水分出納量の確認によって、

脳に血液(酸素・栄養)がちゃんと送られているかも

見ていきましょう。

そして可能な限り不要な病室移動を避け、

担当スタッフもできるだけ統一してください。

これは環境が急変しないことでせん妄の予防になり、

脳機能状態の長期・継続的把握・理解にもつながります。