11 精神のおはなし(2)双極性障害、統合失調症、物質使用障害、ストレス障害(10)
他の2つと比べるとイメージが難しいのが
「解離性障害」。
以前は、自己として統合されている
意識・記憶・同一性・周囲の知覚などが喪失して、
生活面でいろいろな支障が出る病気とされていました。
現在はそれに加えて、運動機能や感覚の喪失、
けいれんなどの身体的症状が出てくるものも含まれます。
…と言われても、どういう状態か分かりにくいですね。
だから、もう少し具体的に。
20~30代の女性に発症することが多く、
「身体の病気はなく」、
「明らかにストレスとなる心理的要因があって」、
「解離状態」という症状が出る病気です。
解離状態に含まれるのは「解離性同一性障害」
「解離性健忘」「解離性遁走」「離人観・現実感喪失症」、
そして「転換症状」です。
解離性健忘は、
外傷等の強いストレス出来事関連情報を思い出せないこと。
解離性遁走は、
家や職場から突然予期なく放浪に出てしまうもの。
数時間で終わることもあれば、数か月に及ぶものもあり、
その間は今までの生活のことを思い出せません。
離人観・現実感喪失症は、
繰り返し(もしくは絶え間なく)
体や心から引き離されたような感覚のこと。
「他人を見ているような感覚」ということで、
急性ストレス障害の「解離症状」ですね。
そして解離性同一性障害(多重人格障害)は、
1人の中に2つ以上の別人格が存在し、
他人格中のことは思い出せません。
ここまで読めば、
「解離性障害は『急性ストレス反応』のような
ストレス原因に対し、忘却や回避行動を、
本来の本人の意思とは無関係に取っているものだ!」と
イメージできるはず。
これらの「解決できない問題に対する心理状態」が
身体症状になったものが転換症状です。
失声、失立失歩のような運動障害、
視覚や聴覚の感覚脱失や知覚麻痺、
けいれん等が見られます。
すごく多様な症状が出ますが、
全てに効果的な治療は存在しません。
単純1回性の出来事が原因なら、
数週間レベルで急によくなることもありえます。
でも、そうでないときには慢性化しがちです。
ストレスに対して
何とか適応しようとしているのが解離性障害。
ストレス状況の変化がないまま、
解離性障害だけを何とかしようとするのは
良策ではないことを忘れないでください。