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12 末梢神経のおはなし(3)触覚と皮膚(後半)(7)

熱による皮膚の損傷が熱傷なら、

圧迫による皮膚損傷が褥瘡です。

皮膚が圧迫を受け、血流障害を生じ、

その部分が損傷を受けたものが褥瘡。

「床ずれ」も、同じことですよ。

最初は圧迫されたところが赤くなります(紅斑)。

この時点で気が付いたら、

体位を交換しましょう。

圧力分散のためにクッション性のある

保護フィルムを貼ることもあります。

そのまま放置されてしまうと血流が途絶え、

皮膚の細胞が死んでしまうと

なかなか治らない潰瘍になってしまいます。

さらに進んでしまうと

皮膚だけでなく筋肉や関節周囲の靱帯まで

露出してしまいます。

これは立派な開放創。

手術対象にもなりうる状態です。

もう骨が見えてしまうのも時間の問題です。

 

褥瘡ができた後、

重症度を評価するものが「DESIGN(+P)」。

潰瘍の深さ、浸出液の有無、大きさ、

炎症の有無、肉芽組織の有無、壊死組織の有無、

ポケットの有無で確認です。

数字が小さくなるほど、良くなってきた証拠です。

 

褥瘡になりやすい

リスク要因の評価がブレーデンスケール。

自力体位交換ができない人、低栄養状態、

汗や尿による湿潤、不快に対する知覚障害、

まさつとずれ等があげられます。

こちらはスケールの点数が小さいほど危険ですよ。

 

褥瘡は、出来てからでは治すのが大変です。

何よりも予防第一。

そして「なぜ起こるのか」の知識も大事です。

 

圧迫回避・軽減はもちろんですが、

予後には栄養状態の影響がとても大きいですよ。

だって、なくなってしまった(損傷した)細胞を

修復するためには、

残った細胞が分裂する必要がありますね。

細胞分裂にはATPが必要。

ATPを作るためには血液中の酸素と栄養が必要でした。

…話が一気に消化器系や循環器系、

呼吸器系とつながりましたね。

だから私たちは「おかしくなったらどうなる?」という

病態学を勉強してきたのです。

 

【全体アウトロダクション】

バイタルサインの区分に従った、

病態学のおはなしをしてきました。

病態学だけではなく、

生化学・生理学・解剖学の理解も深まったはずですよ。

そしてこれらの「正常と異常」が分かると、

看護記録で書かなくてはいけないことに

気付けるようになります。

バイタルサインは正常か、

異常があったら疑われることは何か、

体の中では他に何が起こっているか。

客観的事実だけではなく、主観的事実からも

「ヒトの中で起こっていること」を

確認していけますよね。

 

そして「悪いところ」だけを見るのではなく、

「ヒト全体」を看て、

少しでもいい状態にしていくにはどうしたらいいか…。

1人ではなく、チームで考えていってください。

具体的な方法・内容については

各種看護学はじめ他の科目にお任せしますよ。

最初の「ん?」に気付く、

そんなきっかけとして病態学

(と生化学・生理学・解剖学)を役立てていってくださいね!