12 末梢神経のおはなし(1)末梢神経一般・視覚(8)
ここまで読んでくれれば分かるように、
目(眼球)も細胞の集まり。
網膜だけではなく、透明な水晶体や角膜にも
酸素と栄養分を届ける必要があります。
でも、そこに毛細血管があったら
途中で光が遮られ「レンズ」として十分に働けません。
だから水晶体や角膜(特に内皮)には
「房水」と呼ばれる水分が酸素と水分を届けています。
ここがおかしくなってしまったものが緑内障です。
房水は毛様体で作られ、
虹彩と水晶体の間からしみ出します。
瞳孔(虹彩中央部)から外側に出てきて、
今度は虹彩と角膜の間に入り込み、
そこの奥にある線維柱帯で吸収されるのが、正常な流れ。
虹彩が角膜の方へ圧迫される(押し付けられる)と、
最後の吸収地点まで房水がたどり着けません。
房水がたまると、眼圧が上がってきます。
周りが房水だらけなので、
角膜はむくんでしまいます(角膜浮腫)。
これが視力低下の原因です。
しかも眼痛だけではなく、頭痛・嘔吐も出てきます。
眼科にかかれば、
縮瞳剤で房水が外側に出てくる量を減らしつつ、
高浸透圧剤点滴で体内水分量を減らし、
眼圧を下げることができます。
でも頭痛と嘔吐に目が行ってしまい、
眼科の受診が遅れると眼圧が下がりません。
数日眼圧の高い状態が続くと、
失明の危険があります。
「目が痛い」「よく見えない」があったなら、
緑内障の存在も思い出してくださいね。
(5)感染・外傷
感染や外傷も「変!」の原因ですね。
「外傷」と一言で言っても、
化学物質のせいで
角膜タンパク質が変になる角膜化学症や、
金属の微片が入り込む眼内鉄片異物、
ハサミやナイフで切れてしまう穿孔性外傷や、
ボール、肘、膝が当たって起こる
鈍的眼外傷等があります。
角膜化学症はとにかく水で洗い流してください。
水道水でいいので、全力で薄めてしまうのです。
ヘアカラー等が目に入って眼痛が出たら、
角膜化学症のサインですからね!
他の3種類はすぐに手術になるはずです。
眼球自体は無事でも、
眼球のはまり込む眼窩が骨折してしまうこともあります。
眼窩の下(底)には副鼻腔の上顎洞との境界があり、
眼球を動かす筋肉が引っかかってしまいます。
眼窩の形を整える(整復する)必要がありますね。
まぶたの急性化膿炎は麦粒腫。
発赤、圧痛、眼脂が出ますので、抗菌剤の点眼ですね。
ぶどう膜で炎症が起こると、ぶどう膜炎。
ぶどう膜というのは、
虹彩・毛様体・脈絡膜などの
メラニン色素が多いところの総称。
血管が多く、炎症を起こしやすいところです。
脈絡膜というのは、網膜を裏打ちする栄養提供担当組織。
暗室のように眼球の中を暗く保つ働きも担当しています。
原因として感染症で多いのは結核菌、梅毒。
眼トキソプラズマ症や
ヘルペス性網膜炎も含まれますね。
非感染性では、ベーチェット病や
サルコイドーシスといった自己免疫疾患で起こります。
視覚のおはなし、これで一段落。
次回は聴覚のおはなしに入りましょう。