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2 脈拍・血圧のおはなし(1)心臓2:弁のおはなし(2)

2020年3月27日

右心房と右心室の境目にある三尖弁の狭窄症では、

右心房に血液が停滞することは分かりますね。

停滞すると、うまく縮めなくなって、

右心系の機能を果たせない右心不全につながります。

三尖弁の閉鎖不全は、右心室からの逆流。

静脈血が心臓に入れずにたまる典型的な右心不全です。

「右心不全」は、

右心房や右心室の役目である「肺に血液を送る」ことを

全うできていない状態ですね。

 

右心室出口にあるのが肺動脈弁。

狭窄も閉鎖不全もイメージできると思います。

ただ、全身に血液を送る左心室と違い、

肺に血液を送ればいい右心室にはパワーはありません。

実際「弁独立の異常」よりも

「肺高血圧症のせいで弁がおかしくなった」と

考えたほうが理解しやすくなっています。

肺高血圧症については、

次回の血管系「肺循環障害」のところでおはなしします。

そちらを読み終わってから、もう1度読み直しておいてくださいね。

 

まとめて4つの弁の弁膜症

(狭窄も閉鎖不全も)を説明してしまいました。

先天的なものを除けば、

これらの原因の多くは、従来リウマチ熱の後遺症でした。

A群溶血性連鎖球菌(化膿レンサ球菌)に感染した結果、

関節や心臓に炎症が出てしまう病気です。

「リウマチ」とついていますが、

自己免疫疾患の「関節リウマチ」とは違いますよ!

 

現在では医療の進歩により重度のリウマチ熱が減っているため、

近年では加齢変性(大動脈弁狭窄・閉鎖不全)が注目されています。

また、神経内分泌系の腫瘍から生じる

「カルチノイド症候群(三尖弁狭窄原因)」や、

感染性の心内膜炎があることを頭の片隅に置いておいてください。

カルチノイド症候群は

ヒスタミンやセロトニン・プロスタグランジン過剰により

心不全等の症状が出るもの。

感染性心内膜炎は、

心内膜に傷がついたところに細菌がくっついて固まり(病巣)が

できたことによるものです。

薬物使用者で発症率が高いのは、針の連続使用による感染のせいですね。

「体温(免疫)」でおはなしする、菌血症状態で起こる炎症ですよ。

 

これら弁膜症は重度なら手術対象。

軽度から中度なら、

薬やカテーテル療法の対象になります。

手術やカテーテル処置前後の感染対策の必要性は、

言うまでもありませんね。

薬で多く使われるのは「心臓に負担をかけないためのお薬」です。

血液量が多いと、ポンプに負担がかかるので「利尿薬」。

血管が細いと、ポンプに必要以上に力がかかるので「血管拡張薬」。

…気付けば、心不全や心筋症のおはなしにもつながってきています。

膜のおはなしから、心筋のおはなしに移りましょう。