2 脈拍・血圧のおはなし(1)心臓3:心電図異常(3)
生死に直結する心電図をあと2つ追加します。
高カリウム(K)血症と、心筋梗塞の心電図です。
高カリウム血症といえば、テント状T波。
T波がキャンプに使うテントのように高くとがってしまうものです。
細胞の中に多いはずのカリウムイオンが血液中に多く含まれると、
細胞の中から外へとカリウムイオンが滑り出していけません。
細胞内はずっとプラスのまま。
いつまで待ってもナトリウムチャネルが開きません。
これでは電気刺激が来ても
細胞は「マイナスからプラス、プラスからマイナス」へと変化せず、
周りの細胞に電気刺激を伝えていくことができません。
電気が伝わらないと心筋は収縮できませんから、
心臓が止まってしまいます。
だから「高カリウム血症のテント状T波は、心停止の危険」なのです。
「心筋に酸素と栄養を届ける血管が詰まって、
細胞が死んじゃった!」が心筋梗塞。
次のブロック、血管系でもう1回出てきます。
一度こうなってしまうと心筋を復活させることができません。
だから、
心筋梗塞になりそうな心電図を見分けることが大事になってきます。
心筋に血液が届きにくくなってきたとき、
最初に影響が出てくるのはカルシウムイオンです。
心電図ではT波が大きく、幅が広くなってくる形で現れます。
もう少し影響が出てくると、T波が下向きになります。
これは影響を受けている心筋がT波を作る前に、
周囲の細胞から電気が流れ込んでいる(収縮が遅れている)せい。
そのまま放置して心筋が虚血状態(酸素不足)になると、
ST間が基準から下がった後、基準から上に向かい…
最終的に、Q波が大きい下向きの波になります。
これは「心筋梗塞になってしまった」心電図ですね。
だから、こうなる前に
「T波が変だぞ!」と気付いてあげてください。
ST波に変化が出てきたら、もう一刻の猶予もなりませんよ!
1つ補足をはさんだ後で、次からは
循環器系のうち血管系に注目したおはなしになります。
ぜひ今回の「心臓」と合わせて読んで、
理解を深めてくださいね!