5 体温のおはなし(2)過敏症と自己免疫疾患(5)
(1)自己抗体が関係する自己免疫疾患
自己抗体が悪さをする自己免疫疾患は、
「全身がおかしくなるもの」と
「部分がおかしくなるもの」に分かれます。
A 全身がおかしくなるもの
全身がおかしくなるものの例は、
全身性エリテマトーデス(SLE)です。
Sが全身、LEが「発疹が紅斑」の意味です。
原因は、自分の核に反応してしまう抗核抗体。
なぜ自分の核を異物認定してしまうのかについては、
まだ分かっていないことが多いのですが、
遺伝的・環境的・免疫異常等の多因子の重なりが多いようです。
できてしまった抗核抗体のせいで免疫複合体(Ⅲ型)ができ、
組織が障害されていきます。
ただ「この症状が必ず出る!」と言ったものはありません。
出やすい(典型的)とされているものは、
顔に蝶が羽を広げたように出る赤い斑(蝶形紅斑)ですね。
細い血管が輪っか(ループ)を作り、
そこに血液が流れ込んで赤く浮き上がったものです。
レイノー現象が出ることもありますね。
これは寒冷刺激によって、手の指が一過性に
白(虚血)→紫(チアノーゼ)→赤(血流回復)と色を変えるもの。
自己免疫疾患のせいや閉塞性疾患で出る「二次性」もありますが、
低温業務や振動による「原発性」もありますよ。
保温が大事ですが…原因疾患があるのなら、その治療が一番です。
喫煙は毛細血管を収縮させますから、直接も間接もダメですよ!
全身性エリテマトーデスの治療は、
主にステロイド等の抗炎症薬と免疫抑制薬。
ひどい急性期には、抗体を取り除くために
血漿交換療法や免疫吸着療法をすることもあります。
どうしても長期コントロールが必要になるので、
増悪因子をうまく避けていきましょう。
外傷、寒冷、心身疲労、紫外線等が増悪因子になります。
妊娠自体は可能ですが、
増悪可能性があるのでお医者さんと相談ですね。
もちろん、各種合併症にも注意。
ステロイドを使う以上、
クッシング症候群の存在を忘れてはいけませんね。
クッシング症候群は副腎皮質の過剰症ですね。
ここについては内分泌系でおはなししますよ。