6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(13)

「食道」の物理的原因ではありませんが、

胃が出てきたせいで

食道に問題が起こることもあります。

それが食道裂孔ヘルニア。

横隔膜の胸郭と腹腔の境界の穴が緩んだせいで、

胃の一部が胸腔内にはみ出てくることで、

「横隔膜ヘルニア」とも呼ばれます。

「ヘルニア」というのは、

体の組織が正しい状態からはみ出したもの。

「椎間板ヘルニア」の形で耳にすることが多いと思います。

椎間板ヘルニアについては、

呼吸器系(骨格)のところでおはなししますね。

横隔膜ヘルニアは肺を圧迫してしまうため、

先天性でも、事故等による後天性でも

緊急手術になることが多くなります。

 

足の付け根に出る鼠径ヘルニアは、

乳幼児で起きることも、成人で起こることもあります。

足の付け根にある鼠径管から、

腹膜や腸の一部が

皮膚の下(筋膜の間)に出てきてしまうものです。

このルートは精巣脱出のときに使うところ。

筋肉や各所組織が弱ってきた

中高年の男性に起きやすいようです。

最初は違和感や「押すと引っ込むふくらみ」ぐらいですが、

次第に痛みが出てきます。

腸の一部が出たままになり戻らないものが嵌頓(かんとん)。

腸の壊死警報ですから、もう手術で治すしかありません。

腹圧をかけてはダメですよ!

便性にも、運動にも、荷物重量にも注意です。

この「嵌頓」という言葉は、

小腸のところでまた出てきますからね。

 

胃のはみ出し方によっては、

逆流性食道炎も怖いですね。

まず「食道炎」は、食道の炎症全般を指します。

薬や誤嚥、全身疾患の影響等

いろいろなことで起きますが…

一番多いのは、胃酸による逆流性食道炎です。

粘液があった胃の中とは違い、

ノーガードの食道に胃酸が逆流して、

その刺激で炎症が起こってしまったものです。

原因は入り口の閉まり(胃の働き)悪化に加えて、

腹圧上昇、食道下部の筋力低下等で起こります。

胸やけや食物停滞感、下咽頭違和感、

嚥下時痛や嚥下障害が主症状です。

特に食後と夜間就寝時に出現し、

ひどくなると誤嚥性肺炎にもつながりかねません。

対策としてはとにかく腹圧を上げないこと。

先程の鼠径ヘルニアの注意点と同じく、

ベルトや重いものを持つことを避けること。

「食後すぐ(1~2時間以内)に横になること」と

「寝る前の飲食」は避けてくださいね。

上半身をやや高くして寝ると、楽になるはずです。

あとは食事も刺激を避けて、脂肪を減らして、少しずつ。

胃切除の手術後では、

胆汁すらも逆流してくる可能性があるので、

薬に頼る部分が大きくなってきます。

 

なお、精神のところで出てくる摂食障害では、

食べたものを自発的に吐き戻してしまう

自己誘発嘔吐が多く見られます。

胃酸たっぷりの食べものを頻繁に逆流させるわけですから、

食道にとってたまったものではありませんね。

 

潰瘍は食道でも起きますが、そこまで多くはありません。

ただし、薬が貼りついたために

潰瘍になることがあります。

薬の停滞防止のために、

ちゃんと水分と一緒に薬は飲みましょう。