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6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(24)

D 寄生虫・細菌性肝炎

寄生虫によって肝臓が炎症を起こすこともあります。

それが肝寄生虫性感染症。

肝吸虫(ジストマ)、肝蛭症、

日本住血吸虫等の感染症は減ってきました。

でも予後がよろしくない肝エキノコックスは増加しています。

全身腫瘍のように肺や脳にも感染する怖い寄生虫ですから、

どんなにかわいくてもキツネに触ってはいけません。

急性症状は発熱、出血、腹部不快感ですが、

無症状のことも多いですね。

慢性化すると、

肝硬変のような胆汁うっ滞(血行遮断)、

浮腫、腹水が出てきます。

野生動物の生食は、

自ら寄生虫を体内に取り込んでいるようなものです。

国内のみではなく、海外の食事・食材にも気を付けて!

主に寄生虫に合った薬で対処することになります。

 

細菌や寄生虫によって

膿(うみ)がたまってしまうものが「肝膿瘍」。

大腸菌等が胆道ルートを逆流する細菌性が約9割。

胆管炎から起こることが多いですね。

他にも赤痢アメーバによるアメーバ性肝膿瘍もあります。

赤痢アメーバは血液にのって肺や脳にも感染し、

膿をためることがありますよ。

怖いところは、症状が出ないことがあること。

病巣が近くの他の臓器に移り、

胸膜炎や心嚢炎を起こすことも!

さらに対応が遅れると、敗血症になって、

失明性の眼内炎を起こすこともあります。

判明したら、膿をドレナージしつつ、

抗菌剤などの相手に合わせた薬を使うことになります。

 

膿に限らず、肝臓に発生した

「中に液体がたまった袋状の腫瘍」が「肝嚢胞」。

寄生虫原因(膿など)以外にもありますよ。

非寄生虫原因は、先天性と後天性に分かれます。

先天性の例が胆道障害でもおはなしした胆管低形成。

後天性の例が外傷による血腫や腫瘍、細菌による感染等ですね。

多くは症状が出ませんが、

細菌や寄生虫による感染症では熱と腹痛が出ることがあります。

嚢胞による周囲組織への圧迫と、

破裂にだけは気をつけてくださいね。

 

E ウイルス性肝炎

ウイルスも、肝炎を引き起こします。

最初に注意。

名前に「~肝炎」とついていないウイルスも、

肝炎の原因になります。

ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスも肝炎の原因です。

特に小児で注意してほしいのはEBウイルス。

Bリンパ球からTリンパ球に感染していくウイルスでした。

小児では、劇症肝炎を起こす可能性がありますからね!

名前に「肝炎」が付いているウイルスは、

A~Eまで5種類あります。

AとEが経口感染、BCDは血液・体液感染です。