6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(3)
歯槽膿漏に代表される歯周病は、
慢性炎症からポケットができることが問題です。
始まりは、虫歯同様歯垢(プラーク)。
微生物の出す酸によって、
歯肉が炎症を起こします(歯肉炎)。
刺激を嫌った歯肉は歯から離れ、
食べ物等がはまり込む(仮性)ポケットができます。
ここに食べ物のかすがはまると、
さらに微生物が増えて、酸が出て…、
やがて歯肉やあごの骨といった組織が破壊されてしまい、
歯の周りに真正ポケット完成。
もう、支えを失って歯はぐらぐらです。
これではちゃんと噛むことなんてできません。
歯が抜けずに済んでいるうちに、
手術でポケットを切り取って、
微生物の繁殖の場をなくすことになります。
でも、そんなことになる前に
歯磨きで食べ物のかすを取り除きましょう!
虫歯や歯周病は、口の中だけの問題ではありません。
全身状態と深く関係しています。
糖尿病で口腔乾燥が起こりやすくなるから、
虫歯や歯周病になりやすいということは
先程おはなししましたね。
もう少し後でおはなしする誤嚥性肺炎の原因は、
うっかり気管(空気ルート)に入ってしまった口腔常在菌。
口の中をきれいにしておけば、
誤嚥性肺炎発症のリスクを下げることができます。
実は、動脈硬化や
妊婦の早産(同時に低出生体重児も)にも関係があります。
虫歯や歯周病は、慢性炎症の側面もあるからです。
炎症ということは、
白血球たちが仲間を呼ぶための信号
(サイトカイン)をたくさん出しています。
これらの信号が血管内皮細胞の状態変化をさせるおはなしは、
血液のところでしましたね。
子宮の早期収縮にも、これらの信号は関係しているのですよ。
たかが口の中、されど口の中。
常にきれいにしておく必要があります。
だから「80歳でも20本の自分の歯で噛もう」と
8020運動が推進されているのです。
自分の歯がなくなったときに、
代わりをしてくれるのが入れ歯(義歯)。
以前は全部外せる全部床義歯と部分床義歯(いわゆる「入れ歯」)、
歯に固定するため外せないブリッジしかありませんでした。
近年は、歯の根を人工的に作ってあごの骨に埋め込む
人工歯根(インプラント)もあります。
義歯があっていないと、
「噛む」に直結しますからしっかりと調整する必要がありますね。
義歯は、口腔ケアにもかなり影響を与えます。
多少下手でも、自分でうがい・歯磨き・手入れを
できているうちはまだいいのです。
意識レベルが低下してしまったとき等は、
他の人が代わりにする必要があります。
特に手術後、放射線治療後、
経管栄養や気管切開をしている人の口腔衛生には
気を付ける必要があります。
今までを読み直せば、
口腔ケアの必要性と重要性は分かりますね。
普段何気なくだ液と歯磨きできれいにしているからこそ、
「何もしないと菌だらけになる!」という意識を忘れずに!