7 体温のおはなし(4)内分泌系(代謝異常)(13)
急性合併症だけでも十分大変なのに、
慢性合併症ではさらに対策対象が広がります。
まず、先程も出た
「腎臓の働きがおかしくなってしまう(腎症)」。
このせいで血漿タンパクのアルブミンが
尿になって体の外に出ていってしまいます。
…低タンパク(アルブミン)血症と、
尿タンパク(タンパク尿)が出ていること、分かりますね。
そのせいでさらに腎臓の働きは
おかしくなっていってしまいます。
最終的には腎不全になってしまうのですが、
そこは下部消化器系(腎臓)のおはなしです。
次に視覚に必要な網膜もおかしくなります(網膜症)。
出血、浮腫、白斑から黄斑に変わり…。
対応が遅れると網膜剥離の危険です。
さらに白内障や緑内障も起こし、
失明危険がかなり高まります。
加えて、各種神経障害(末梢神経障害)。
しびれ、異常感覚、疼痛、感覚低下といった
末梢神経障害に加え、
アキレス腱等の腱反射が失われる
多発性神経障害も起こりえます。
この3つの腎症・網膜症・末梢神経障害が三大合併症です。
他にも、下肢潰瘍や壊死(壊疽)といった足病変、
虚血心疾患や閉塞性動脈硬化症といった大血管症状、
易感染性などが見られます。
これら合併症は相互作用があるので、
1つ症状が出ると次々と悪化していきます。
例えば、末梢神経障害のせいで
足を少し怪我しても気付きにくい状態で、
ATP不足のせいで働きが鈍くなった白血球たちでは、
感染を防げませんね(易感染性)。
後手に回った白血球たちは、
感染してダメになった細胞を処分しますが、
新たな細胞で埋めようにも細胞分裂するATPがありません。
これは潰瘍や壊死につながります。
白血球たちはそれでも頑張ろうと仲間を呼びますから…
血管内皮は変化が起きやすい状態ですね。
こちらは血管内病変のきっかけになります。
糖尿病自体が動脈硬化症のリスク因子だったのは、
このせいです。
急性・慢性の合併症についておはなししてきました。
糖尿病は「治す」病気というよりも、
「うまく付き合っていく」病気です。
目標は、健康な人と同じくらいの
生活の質(QOL)と健康寿命を維持すること。
進行を抑えてうまく付き合っていくには、
セルフコントロールが重要になってきます。
全体を見つつ、生活全般の指導・教育・情報提供。
看護師の腕の見せ所ですね。