7 体温のおはなし(4)内分泌系(全般)(4)
甲状腺ホルモンが不足するのが「甲状腺機能低下症」。
末梢組織における甲状腺ホルモン作用不足で、
全身または標的器官が機能不全です。
症状として何が起こるか、
「代謝(ATP産生)」から考えてみましょう。
代謝が下がったせいで低体温。
汗をかいて体温を逃がす必要ない(発汗減少)から、
表面が乾く(皮膚の乾燥)。
ATPが足りないから力が入らない
(全身倦怠感・無力感・腸管に力が入らず便秘)。
呼吸筋も力不足で息を強く吐けず(かすれ声)、
神経細胞がうまく刺激を電気変換できずに
聞き取りにくい(聴力低下)…等が起こります。
あと、代謝低下から
皮下に粘液状のむくみ(粘液水腫)が生じますよ。
甲状腺固有の原因としては、
先天性、医療性(手術や薬)、
ヨウ素不足、橋本病などが考えられますね。
先天性は
「先天性甲状腺機能低下症(クレチン病)」を覚えておきましょう。
甲状腺ホルモンは中枢神経発達に必要なので、
可能な限り早く対処する必要があります。
だから、新生児マススクリーニングに含まれているのです。
残りの5つは、副腎と代謝異常のところで追加しますよ。
ヨウ素不足は海藻大好き日本人なら心配する必要はありません。
むしろ「とりすぎによる甲状腺ホルモン欠乏」の方が心配です。
ヨウ素過剰になると甲状腺機能が低下する
(ウォルフ・チャイコフ効果)のですが、
その仕組みはよく分かっていません。
過剰なヨウ素がたまることで、
ヨウ素からホルモンを作るところが
邪魔されているのではないかと考えられています。
便秘薬として民間療法で使われるネコンブ水は、
ヨウ素多すぎです。
橋本病はこれまた自己免疫による組織障害。
重症になると、顔に浮腫(粘液水腫)が出ることがあります。
治療としては、甲状腺ホルモンを内服することが多いですね。
一生ものの内服になる人もいますから、服薬指導が大事ですよ。
甲状腺ホルモンの過剰・欠乏を引き起こさない
甲状腺炎もあります。
これも自己免疫が関係しているのではないかと考えられています。
甲状腺に腫瘍ができることもありますよ。
がんの種類自体は多いのですが、
がん全体の発生数から見ると
甲状腺がんの発生割合はごくわずかです。
一番多い乳頭がんは手術が有効ですが、
リンパ転移するので、早めの対処が必要ですね。