8 下部消化器系・生殖器系のおはなし(1)腎臓と尿(1)
下部消化器系の役目は、不要物の排出。
いらなくなったものを体の外に出さないと、
必要なものを新しく体の中に入れることができません。
いらなくなったもの(不要物・老廃物)は
「水に溶けるもの(又は水で押し出すもの)」と
「水に溶けないもの」に分けられます。
「水に溶けるもの(又は水で押し出すもの)」は尿で、
「水に溶けないもの」は便で体外に排出しますね。
今回は、主に尿による体外排出。
便による体外排出については、次回のおはなしです。
生殖器系は、場所も働きも下部消化器系と密接な関係にありますね。
尿の排出に関係のある所は今回おはなしします。
残りの生殖器系は、便のおはなしのときに一緒にしますからね。
尿を作るところは腎臓です。
腎臓が血液から尿を作り、
できた尿を輸尿管が膀胱へと運び、
膀胱にためて、尿道経由で体の外に出す。
これらをまとめて泌尿器系と呼びますね。
このどこかがおかしくなると、
尿による体外排出に問題が出てきます。
大きく分けると「腎臓がおかしくなって尿を作れない!」と
「通路に問題があって外に出せない!」ですね。
1 腎臓の異常
「腎臓がおかしくなった!」についてみていきましょう。
大まかな流れは「炎症」、
「急性機能不全(急性腎不全)」、
「慢性機能不全(慢性腎不全)」になることは、
肝臓とほぼ同じ。
ただ、これらにまたがる
「ネフローゼ症候群」がありますので、少し注意です。
腎臓の炎症には「糸球体で起こるもの」と、
輸尿管に尿を送るための腎盂で起こる腎盂腎炎など
「糸球体以外で起こるもの」があります。
まずは、糸球体で起こる炎症を理解しましょう。
(1)(急性)腎炎
糸球体で起こる炎症として
「糸球体腎炎」をおはなししますね。
糸球体腎炎には「原発性(一次性)」と
「続発性(二次性)」があります。
続発性の主な原因、糖尿病と
全身性エリテマトーデス(SLE)についてはもうおはなししてあります。
原発性糸球体腎炎で覚えておいてほしいのが
「急性糸球体腎炎」。
「溶連菌感染後急性糸球体腎炎」とほぼ同義語です。
小児から若年成人に多く、
β溶血連鎖球菌(溶連菌)の咽頭炎から、
1~2週間の潜伏期間を経て発症します。
のどの痛み(咽頭炎)が治ったころに、
浮腫・高血圧が出始めて、
そこからタンパク尿、血尿、乏尿が
3か月ぐらい続くことになります。
始まりは糸球体のろ過機能が悪化して、
水分排出がうまくいかなくなった状態。
ろ過機能の悪化が進むと乏尿(1日尿量400㎖以下)、
何とかろ過機能を改善させるべく
糸球体のざるの目がスカスカになると
血液中タンパク質や血球が抜け、
尿に出てしまいます(タンパク尿・血尿)。
これが、軽症で出る
無症候性タンパク尿と肉眼的血尿(コーラ尿)です。
ひどくなると、胸水、うっ血性心不全、
高カリウム血症、代謝性アシドーシスです。
胸水とうっ血性心不全は、ろ過機能がさらに悪化したせい。
高カリウム血症と代謝性アシドーシスは、
水素イオンはじめ
ミネラルの調節すらうまくいかなくなった状態です。
原則として3か月くらいで治るため、
対症療法となります。
入院して、安静にしつつ、
減塩食で高血圧対策、利尿を促して浮腫の改善です。
ただ、場合によっては
緊急人工透析が必要になることもありますよ。